●平成22(ネ)10022 損害賠償請求控訴事件 特許権

 本日は、『平成22(ネ)10022 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成22年07月20日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100727144221.pdf)について取り上げます。


 本件は、損害賠償請求控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。


 本件では、争点1(本件通常実施権許諾契約の有効性)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 塚原朋一、裁判官 東海林保、裁判官 矢口俊哉)は、

『1 争点1(本件通常実施権許諾契約の有効性)について

ア 原判決が独占的通常実施権を認定した誤りについて

 この点について,控訴人は,本件専用実施権設定契約の内容と本件通常実施権許諾契約の内容とが必ずしも一致するものとは思われないのに,原判決が,これを一致しているとして独占的通常実施権の効力を認めたのは,特許法の制度を没却するものである等縷々主張する。


 しかしながら,前記認定のとおり,専用実施権設定契約の当事者間では,独占的な実施権を付与するという合意は成立しているのであるから,このような契約当事者の合理的な意思を解釈すれば,専用実施権設定契約において,何らかの事情で同契約に基づく専用実施権の設定登録ができなかった場合独占的通常実施権の設定契約を排除することが認められる特段の事情がない限り,専用実施権の設定契約に代えて独占的通常実施権の設定契約を締結する意思があると解するのが相当であって,この点は,本件専用実施権設定契約の内容と本件通常実施権許諾契約の内容が一致しているか否かとは関係がないというべきである。


 そして,本件においては,全証拠を精査しても,独占的通常実施権の設定契約を排除することが認められる特段の事情は認められない。


 したがって,本件において,独占的通常実施権の効力を認めたとしても,何ら特許法の制度を没却するものではない。


以上により,この点に関する控訴人の主張は失当である。


イ 独占的通常実施権について再実施契約を認定した誤りについて

 この点について,控訴人は,通常実施権の登録が一切認められない実施権は,特許法上の通常実施権とはいえないものであるから,通常実施権の再実施権は認められず,本件のように,専用実施権の設定登録をせずにされた実施許諾は無効である旨縷々主張する。


 確かに,専用実施権については,特許権者の承諾があれば,通常実施権を設定することができる旨の明文の規定(特許法77条4項)があるが,通常実施権については,同様の明文は存しない。


 しかしながら,通常実施権者は,特許権者の承諾があれば,その通常実施権を第三者に譲渡したり,質権を設定したりすることができるのであるから(同法94条1項,2項) ,同様に,特許権者の承諾があれば,再実施契約を設定することも可能と解すべきである。


 そして,前記認定のとおり,本件においては,本件専用実施権設定契約(乙1)において,再実施が許諾されているのであるから,専用実施権設定契約に代えて独占的通常実施権設定契約が締結されていると認められる以上,同契約においても,同様に,再実施契約について特許権者の許諾があると認めるのが相当である。


 また,控訴人は,特許庁の取扱いとして通常実施権に基づく再実施契約の登録ができないことを問題とするが,通常実施権の登録は対抗要件にすぎないから,登録の有無は再実施契約の有効性には影響しないというべきである。


以上により,この点に関する控訴人の主張も失当である。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい