●平成22(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権「Jo−Ju」

 本日は、『平成22(行ケ)10076 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「Jo−Ju」平成22年06月30日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100701150458.pdf)について取り上げます。

 本件は、商標登録無効審判の棄却審決の取り消しを求めた審決取り消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。

 本件では、商標の類否の判断基準についての判断が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 本多知成)は、

『1 商標の類否の判断基準について

 商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであって,商品の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,この3点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められないものについては,これを類似商標と解することはできないものである最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)


 そこで,上記の観点から,本件商標と原告が取消事由で採り上げる引用商標1ないし4,6ないし14(以下「本件引用商標」という。)との類否について検討することとする。


2 本件商標と本件引用商標との類否について

ア引用商標1との類否

(ア) 称呼について

 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり「Jo−Ju」の文字からなり,「ジョージュ」又は「ジョジュ」の称呼を生じ,他方,引用商標1からは「ジョーズ」との称呼が生ずる。

 本件商標の称呼のうちの上記「ジョージュ」と引用商標1の称呼である「ジョーズ」とを比べると,いずれも長音を含む3拍からなり,第1拍と第2拍(長音)を共通にするが,最後の拍が異なる。

(イ) 外観について

 本件商標は,前記第2の1(1)のとおり,欧文字のみの1段構成の「Jo」と「Ju」の文字をハイフンでつないだものであるのに対し,引用商標1は,別紙引用商標目録記載1のとおり,欧文字「JAWS」と漢字「上手」を上下2段に併記した構成であって,また,欧文字は,本件商標とつづりが異なり,かつ,ハイフンも存在しないとの相違がある。


(ウ) 観念について

 本件商標については,格別の観念を認めることができないのに対し,引用商標1のうちの「JAWS」については,我が国では,巨大な人食いザメを題材にしたスティーヴン・スピルバーグ監督制作の米国映画の題名又は人食いザメの観念が生ずることがあり,また,「上手」については,物事に巧みなこと,手際の良いことを意味する観念が生ずるものである。


(エ) 小括

 以上によると,本件商標と引用商標1とは,外観が異なり,また,本件商標については格別の観念が認められないから引用商標1とは比較する余地のないものであり,さらに,称呼についても音声構成が3拍と短い一連のものであるうちの1拍が異なるものである(なお,本件商標から生ずる「ジョジュ」の称呼は,引用商標1から生ずる「ジョーズ」の称呼と,より相違する。)から,子音や母音が共通する部分があるなどの原告主張の点を考慮したとしても,称呼上の差異も無視し得ないものであって,本件商標は,引用商標1と類似するものと解することはできない。


 …省略…


3 原告の主張について

 原告は,「PIAGE」,「ピアゼ」の文字を上下2段に併書してなる商標と「PIAGET」の文字を横書きしてなる商標との各称呼についての類似を認めた前掲東京高裁平成元年3月14日判決を挙げて,その判断を本件においても参考にすべきであると主張するが,その対象となる称呼は本件とは相違するものであるばかりでなく,前記1のとおり,商標の類否については,取引の実情を含め,外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察し,商品の出所の誤認混同のおそれの有無によって判断されるべきものであって,当裁判所の上記判断もその結果にすぎないから,上記判決の判断によって影響されるものではない。

4 結論

以上の次第であるから,本件商標は,本件引用商標のいずれとも類似するものと解することはできず,商標法4条1項11号に違反して登録されたものということができないので,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。