●昭和42(行ツ)32「青星事件」昭和43年02月09日 最高裁判所第二小法

 本日は、昨日取り上げた『平成21(行ケ)10354 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「クラブハウス」平成22年04月14日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100415155731.pdf)の中で引用されていた最高裁事件である、●『昭和42(行ツ)32 商標登録取消審判の審決取消請求 商標権 行政訴訟「青星事件」昭和43年02月09日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D61E0630D994AC1249256A8500312376.pdf)について取り上げます。


 つまり、本最高裁事件の内容は、以下の通りです。


『               主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         
                理    由
 上告代理人山菅正誠の上告理由第一点について。
 論旨は、要するに、原判決には、被上告人が本件商標登録取消の審判を請求し得る利害関係人であるかどうかについて職権調査を怠つた違法があるという。
 しかし、被上告人が旧商標法(大正一〇年法律第九九号以下同じ。)の利害関係人に当るものであることは原判決の認めるところであり、しかして原審でこの点につきなんら争がなかつたことは記録上明らかであるから、原判決が右について判断を明示しないからといつて、調査を怠つたとすることはできない。論旨は採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、上告人会社の社用便箋や封筒に本件登録商標の記載のなされていることが証拠上明らかであるにもかかわらず、原審が本件登録商標使用の事実を認めなかつたことは、商標使用の解釈を誤り、経験則及び採証法則に違背し、釈明権不行使の違法をおかしたものである、という。


 しかし、商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品そのものに付せられて使用されていることは必要でないが、その商品との具体的関係において使用されていることを必要とするものと解するのが相当である。そして、また、商標を表示した取引書類であつても、所論のようにそれが常に指定商品との具体的関係において使用されるものと推認すべき経験則は、存在せず、右の事実は、当事者において、裁判所の釈明をまつまでもろく、主張・立証する必要があるものといわなければならない。


 いま、原判決の確定した事実によれば、所論便箋は、上告人会社の取締役に対する取締役会招集の通知や株主に対する臨時株主総会の通知に使用されたにすぎないものであり、また、所諭封筒は、未使用のものであつて、他に、これらの書類が本件登録商標の指定商品たる「ソース」等との具体的関係において使用されたことを認めるに足る資料はなく、結局、本件訴訟に現われた全証拠をもつてしても、上告人が昭和二八年以降本件登録商標を使用した事実は認められない、というのである。

 されば、原審の前記判断は、正当であつて所論の違法はなく、論旨は、到底、採用することができない。


 同第三点及び第四点について。

 論旨は、要するに、本件登録商標を使用しなかつたと認めた原判決に判断遺脱、理由不備、理由齟齬、経験則違背、審理不尽の違法がある、という。

 しかし、本件登録商標は、「青星」なる文字が商標の採択理由となつているとしても、説明を受けて仔細に観察した場合にはじめて納得し得るほど極端に右の文字を変更、図案化したものであること、原判決の確定するところであるから、本件登録商標は、この特殊の形態において商標としての特別顕著性を有するものであるというべきである。そこで、本件登録商標の使用の有無を判断するにあたつては、単にその商標から生ずることあるべき称呼、観念だけではなく、右特殊形態又は少なくとも取引上これと同視せられるべき形態における使用の有無を基準とすべきである。また、旧商標法一四条一項但書にいう「聯合ノ商標」とは、使用に係る当該商標が単に審判の対象たる登録商標と類似であるというだけでは足らず、その連合商標として登録されたものでなければならないこと、同法三条の規定に徴して明らかである。しかして、原判決の確定した事実によれば、所諭使用に係る商標は、本件登録商標の連合商標として登録されたものでないこと、上告人の認めて争わないところであり、他に、本件登録商標がその前記特殊形態又は取引上これと同視せられるべき形態において使用されたことを認めるに足る証拠はない、というのである。従つて、仮りに、本件登録商標から所論のごとき称呼、観念が生じ、また、所論使用に係る商標が本件登録商標と類似であるとしても、このことによつて、上告人が正当の理由なくして本件登録商標を昭和二八年以降引続き三年間使用しなかつたものとした原審の判断の当否が左右されるいわれはなく、その判断の過程にも所論の違法あるを見出し得ない。

 されば、論旨は、理由がなく、排斥を免かれない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。』