●平成21(行ケ)10354 審決取消請求事件 商標権「クラブハウス」

 本日は、『平成21(行ケ)10354 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「クラブハウス」平成22年04月14日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100415155731.pdf)について取り上げます。


 本件は、不使用取消審判の認容審決の取消を求めた審決取消訴訟事件で、その請求が認容された事案です。

 本件では、商標の使用の有無についての判断が参考になるかと思います。

 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 本多知成)は、

『2 商標の使用の有無

(1) 指定商品についての使用の有無

ア 商標の使用があるとするためには,当該商標が,必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが,その商品との具体的関係において使用されていなければならない最高裁昭和42年(行ツ)第32号同43年2月9日第二小法廷判決・民集22巻2号159頁)。


イ 前記1認定のとおり,原告は,メールマガジン及びWeb版に「クラブハウス」なる標章を表示している。


 メールマガジン及びWeb版には,加工食料品を中心とした原告商品に直接関係し,原告商品を広告宣伝する情報が掲載されているから,メールマガジン及びWeb版は,顧客に原告商品を認知させ理解を深め,いわば,電子情報によるチラシとして,原告商品の宣伝媒体としての役割を果たしているものということができる。


 このように,メールマガジン及びWeb版が,原告商品を宣伝する目的で配信され,多数のリンクにより,直接加工食料品等の原告商品を詳しく紹介する原告ウェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっていることに照らすと,メールマガジン及びWeb版は,原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報ということができ,そこに表示された「クラブハウス」標章は,原告の加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。


 したがって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報に付されているものということができる。


ウ この点に関して,被告は,原告が「クラブハウス」標章をメールマガジンの名称・識別標識としてのみ使用しているから,商品についての使用に当たらないと主張する。なるほど,前記1(2)認定のとおりの使用態様によれば,「クラブハウス」の表示はメールマガジンの名称としても使用されていることは否定することができない。


 しかしながら,商標法2条3項1号所定の使用とは異なり,同項8号所定の使用においては,指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ,リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び,加工食料品たる原告商品の広告を閲覧できること,そして,そのような広告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであると解されること(甲189)からすると,原告のメールマガジン及びWeb版における「クラブハウス」の表示が,原告商品に関する広告に当たらないということはできない。


 また,被告は,原告のメールマガジン及びWeb版には,全体の商品には「ハウス食品」商標が表示され,個々の商品にはそれぞれ個々の商標が表示されているから,「クラブハウス」標章が表示されているとしても,商品についての使用に当たらないとも主張する。


 しかしながら,個々の商品に2つ以上の商標が付されることもあり得るところ,製造販売の主体である原告を表す「ハウス食品」商標が付されているからといって,原告商品を宣伝する目的で配信されるメールマガジン及びWeb版に原告を表す「クラブハウス」標章を付すことが,商標の使用に当たらないということはできない。


 さらに,被告は,メールマガジンの受信者は,単なる一般の食品購入者でなく,メールマガジン「クラブハウス」の会員のみであると主張する。


 しかし,だれでも無料で上記会員になることができることに照らし,これが広告に当たらないということはできない。


エ よって,「クラブハウス」標章は,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告に付され,又は原告商品を内容とする情報に付され,原告の製造販売する加工食料品との具体的関係において使用されているものということができる。


(2) 登録商標との同一性

ア 商標権者が指定商品について登録商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明した場合には,商標法50条による登録商標の取消しを免れることができるところ(商標法50条2項),「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」も「社会通念上同一と認められる商標」とされている(同条1項)。


イ 原告のメールマガジンに付された「クラブハウス」標章は,上下2段で表された本件商標の下段と同一であり,その結果,本件商標と同一の称呼及び観念を生ずるものということができる。よって,上記「クラブハウス」標章は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たる。


 原告のWeb版に付された図形付きの「クラブハウス」の表示は,鍋の図形中に「クラブハウス」と大きく表示され,鍋の部分に小さく「Web版」と表示されている態様に照らし,「クラブハウス」の部分からも称呼及び観念が生じ,その結果,本件商標と同一の称呼及び観念が生ずると評価することができる。よって,上記図形付きの「クラブハウス」の表示は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たる。


ウ この点に関して,被告は,Web版に付された図形付きの「クラブハウス」の表示は,一体として認識すべきであると主張する。


 しかし,その外観からみて,大きな文字で表された「クラブハウス」の部分からも称呼及び観念が生じることは,明らかである。


 また,被告は,Web版の冒頭の文字のみからなる「Web版クラブハウス」の文字標章も全体を一体として認識すべきであると主張する。


 しかし,仮に一体として認識した結果,本件商標と異なる称呼,外観,観念を生じる余地があるとしても,Web版には,それとは別に,上記のとおり本件商標と社会通念上同一と認められる図形付きの「クラブハウス」が表示されているのであるから,その主張は失当である。


エ したがって,原告がメールマガジンに付した「クラブハウス」標章及びWeb版に付した図形付きの「クラブハウス」の表示は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に当たる。


(3) 小括

 以上のとおり,原告は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,加工食料品を中心とする原告商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報であるメールマガジン及びWeb版に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し,これを電磁的方法により提供したものである。原告の上記行為は,商標法2条3項8号に該当する。


 よって,原告の「クラブハウス」標章の使用行為は商標法2条3項8号に該当せず,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていることを認めるに足りないとした本件審決の認定判断は,誤りである。


3 結論

 以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由があり,本件審決は取り消されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。