●平成21(行ケ)10229 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10229 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成22年03月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100331104112.pdf)について取り上げます。


 本件では、まず、被告に無効審判請求人適格が有るか(取消事由4)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知材高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


『2 被告に無効審判請求人適格が有るか(取消事由4)について

(1) 原告は,その取消事由4において被告には本件商標登録無効審判請求を請求する資格(請求人適格)がないと主張し,被告はこれを争うので,事案に鑑み,まずこの点について判断する。


 商標登録無効審判請求については,商標法46条が定めているが,その請求人たる資格については明示するところがない。


 しかし,商標登録の取消審判請求をすることができる者に関し同法50条1項が「何人も」と定めていること,商標登録無効審判請求に類似した制度である特許無効審判請求の請求人に関し特許法123条2項も「何人も」と定めていること,商標に関する審判手続を定めた商標法56条は特許法148条(参加)を準用しているところ,同審判手続に補助参加人として参加することができる者は「審判の結果について利害関係を有する者」に限られると定めていること,無効審判請求と類似した制度である民訴法の一般原則として,「利益なければ訴権なし」と考えられること等を考慮すると,商標法46条に基づき商標登録無効審判請求をする資格を有するのは,同条の解釈としても,審判の結果について法律上の利害関係を有する者に限られると解するのが相当である。


 そこで,請求人たる被告(社団法人全日本コーヒー協会)に上述した意味での利害関係があるかについて以下検討する。



(2) 証拠(甲39の1〜4,乙33)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。


 ・・・省略・・・


(2) 上記(2)認定の事実によれば,被告は,「コーヒーの輸出入若しくは卸売を業とする者又はこれらの者の組織する団体」及び「コーヒーの製造若しくは加工を業とする者又はこれらの者の組織する団体」を会員とする社団法人で,「コーヒーの品質の維持向上を図り,並びに加工製造技術の研究開発及び流通の合理化を推進し,国際コーヒー機関の事業に協力しつつ国内コーヒーの消費振興に努めることにより,国内コーヒー関連業界の健全な発展を図るとともに,国民食生活の向上発展に寄与すること」を目的としているものと認められる。


 ところで,被告の会員である「コーヒーの輸出入若しくは卸売を業とする者」及び「コーヒーの製造若しくは加工を業とする者」は,本件商標登録が有効である限り,その指定商品である「コーヒー,コーヒー豆」について本件商標を使用することができないから,本件商標登録の有効性は,被告の会員である「コーヒーの輸出入若しくは卸売を業とする者」及び「コーヒーの製造若しくは加工を業とする者」にとって利害関係があるということができる。


 そして,被告は,上記のとおり「コーヒーの品質の維持向上を図り,…流通の合理化を推進し,…国内コーヒーの消費振興に努めることにより,国内コーヒー関連業界の健全な発展を図るとともに,国民食生活の向上発展に寄与すること」を目的としているから,国内コーヒーの消費振興事業を実施する場合は商標使用に関し会員と同様の立場であるのみならず,会員が本件商標を使用することができるかどうかは,上記目的の実現に関連した事項であるということができる。

 したがって,被告は,「その他本会の目的を達成するために必要な事業」(第4条(9))として,本件無効審判請求を行うことができるというべきであるから,本件商標登録無効審判請求をするにつき利害関係を有し,請求人適格を有すると認めるのが相当である。』


 と判示されました。