●平成21(行ケ)10305 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟

 本日は、『平成21(行ケ)10305 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「Pink berry」平成22年02月03日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100203153217.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録の不使用取消審判の棄却審決の取り消しを求めた審決取り消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本件商標の使用の有無についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『2 本件商標の使用の有無

(1) 被告の行為

 前記1に認定した事実によれば,被告は,「PINK BERRY 大須店」の名称の被告店舗において,遅くとも平成20年3月29日ころから,「PINKBERRY」の下げ札を付した衣料品を販売し,遅くとも平成18年5月24日ころから,「PINK BERRY」と表示した手提げ袋を衣料品を収納する包装として使用してきたものである。


(2) 「本件商標」の使用といえるか否か

ア「PINK BERRY」の表示は,本件商標「Pink berry」の文字をすべてアルファベットの大文字により表記したものであり,両者は,いずれも「ピンクベリー」の称呼及び「ピンク色の果実」という観念を生じ,社会通念上実質的に同一のものと評価することができる。


イ原告の主張(3)について

 この点について,原告は,渋谷109に入っている店舗のファッションブランド名は,大文字と小文字を厳密に区別しているから,需要者である若い女性の認識を前提にした場合には,「PINK BERRY」と「Pink berry」とは全く別物であると主張する。


 しかし,需要者である若い女性の認識が常にアルファベットの大文字と小文字を厳密に区別するものとまではいえないし,仮に,それゆえに両者に外観上相違する部分があるとしても,「平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であっても「社会通念上同一と認められる商標」とされていること(商標法50条1項)に照らすと,「PINKBERRY」と「Pink berry」とが称呼及び観念において同一である以上,社会通念上これらを同一のものと評価して差し支えないというべきである。


(3) 本件商標の「使用」といえるか否か

ア 被告が,前記認定のとおり,衣料品の下げ札や手提げ袋に「PINK BERRY」の表示をしてこれを販売している行為は,商標法2条3項1号の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」及び同項2号の「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示…する行為」に該当する。


イ原告の主張(4)について

 原告は,被告店舗で販売されている商品には,製造元である別ブランドのタグと紙タグが付いており,商品の出所は製造元である他者との認識を有するから,商品についての自他識別機能や品質保障機能の観点からは,「PINK BERRY」の表示は意味をなさないと主張する。


 なるほど,「PINK BERRY」の表示は,被告の営業する被告店舗の名称としても使用され,商品には,販売元である被告の「PINK BERRY」の表示の下げ札のほか,製造元を示すタグ等が付されている。


 しかし,商品に係る商標が,「業として商品を…譲渡する者」にも与えられるものであり(商標法2条1項1号),商品の製造業者のみならず,小売業者もまた,商品の譲渡等を行うことに変わりはないことに照らすと(同条3項2号参照),小売業者としての出所を表示することが,商標としての使用に当たらないということはできない。


 そうすると,「PINK BERRY」の表示の下に衣料品を陳列販売し,また,衣料品に上記表示を付したことは,業として衣料品を譲渡する者がその販売業者としての出所を表示するものとして,本件商標を使用したものと評価することができる。


ウ原告の主張(5)について

 原告は,「PINK BERRY」の表示は,特定の商品との密接な関連性がなく,単に店舗における小売サービスを認識させるにとどまるから,小売等役務の出所を表示するにすぎず,指定商品の出所を識別させるものではなく,本件商標が指定商品について使用されていたとはいえないと主張する。


 平成19年4月1日に小売等役務商標制度が新たに施行されたところ,商標を小売等役務について使用した場合に,商品についての使用とは一切みなされないとまではいうことができない。すなわち,商品に係る商標が「業として商品を…譲渡する者」に与えられるとする規定(商標法2条1項1号)に改正はなく,「商品A」という指定商品に係る商標と「商品Aの小売」という指定役務に係る商標とは,当該商品と役務とが類似することがあり(同条6項),商標登録を受けることができない事由としても商品商標と役務商標とについて互いに審査が予定されていると解されること(同法4条1項10号,11号,15号,19号等)からすると,その使用に当たる行為(同法2条3項)が重なることもあり得るからである。そして,商品の製造元・発売元を表示する機能を商品商標に委ね,商品の小売業を示す機能を小売等役務商標に委ねることが,小売等役務商標制度本来の在り方であり,小売等役務商標制度が施行された後においては,商品又は商品の包装に商標を付することなく専ら小売等役務としてのみしか商品商標を使用していない場合には,商品商標としての使用を行っていないと評価する余地もある。


 しかしながら,本件商標は,小売等役務商標制度導入前の出願に係るものであるところ,前記1の認定事実によれば,被告は,小売等役務商標制度が施行される前から本件商標を使用していたものである。


 このように,小売等役務商標制度の施行前に商標の「使用」に当たる行為があったにもかかわらず,その後小売等役務商標制度が創設されたことの一事をもって,これが本件商標の使用に当たらないと解すると,指定商品から小売等役務への書換登録制度が設けられなかった小売等役務商標制度の下において,被告に対し,「洋服」等を指定商品とする本件商標とは別に「洋服の小売」等を指定役務とする小売等役務商標の取得を強いることになり,混乱を生ずるおそれがある。


 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

(4) 小括

 よって,被告は,本件審判の請求の登録前3年以内に,指定商品に含まれる「洋服」について,本件商標と社会通念上同一の「PINK BERRY」の表示をもって,本件商標を使用したものと認められる。


3 結論

 以上の次第であるから,原告主張の取消事由には理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。