●平成21(行ケ)10171審決取消請求事件 商標権「NU−STEEL」

 本日は、『平成21(行ケ)10171 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「NU−STEEL」平成21年12月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091228155614.pdf) について取り上げます。


 本件は、不使用を理由とする商標登録審判の認容(取消す旨の)審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が認容され、審決が取り消された事案です。


 本件では、まず、使用標章が使用された指定商品に係る認定判断の誤りについての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 大須賀滋、裁判官 齊木教朗)は、


『1 使用標章が使用された指定商品に係る認定判断の誤り(取消事由1)

(1) 原告商品が「鋼」に当たるかについて

 原告商品が,被告において不使用取消審判を請求した指定商品「鋼」に使用されたことが証明できたかについて判断する。

ア事実認定


 ・・・省略・・・


(エ) 以上によれば,原告は,審判の請求の登録がされた平成19年11月6日の前3年以内に,その販売する商品(M形鋼及び鋼板等)の宣伝広告,見積書,契約書等に,使用標章を表記してこれを使用していると認められる。


イ判断

(ア) 原告が登録商標を使用した原告商品が,被告において登録商標の取消しを求めた指定商品である「鋼」に含まれるか否かを判断する(なお,取消審判の争点は,原告が登録商標を使用した原告商品が,商標法施行規則6条別表所定の「鋼」に形式的に該当するか否かではなく,原告商品が,被告において取消しを求めた指定商品である「鋼」に該当するか否かである。この点は,商標法50条1項は,登録商標の不使用を理由として,登録商標の取消しを求める者は,登録商標に係る指定商品等の全部又は一部の任意の指定商品を選択して,その取消しの審判を求めることができる趣旨,同条2項は,商標権者等において,審判請求人の取消請求に係る指定商品等の使用をしていることを証明しない限り,その指定商品等に係る登録商標の登録の取消しを免れない趣旨を,それぞれ規定していることから明らかである。)。


 上記のとおり,原告は,審判の請求の登録がされた平成19年11月6日の前3年以内に,原告商品の宣伝広告,見積書,契約書等に,使用標章を表記してこれを使用している。そして,原告商品は,次のとおりの特徴を有している。


 すなわち,?原告商品は,断面形状につき,直角に互い違いに6回折り曲げて構成されたM字型様の鋼材(形鋼)であること,?原告商品は,国土交通大臣から,安全上,防火上又は衛生上必要な品質に関して,建築基準法所定の認定を受けた建築材料(構造用鋼材及び鋳鋼)であること,?原告商品は,住宅,店舗等の建物の材料として使用されることが多いが,その他,駐車場等の構造物,ごみ収集箱,テーブル,棚等の材料として使用されることもあること,?原告商品は,オーストラリアのCDS−Nu−Steel社が製造し,原告が同社から輸入販売しているものであること等の性質及び特徴がある。


 原告商品は,このような性質・特徴を持った典型的な鋼材であるから,被告において登録商標の取消しを求めた指定商品である「鋼」に含まれることは明らかである。


(イ) この点,被告は,原告商品が「建築用又は建築用のスチール製専用材料」に該当するから「鋼」には含まれない,したがって,審決の認定,判断に誤りはないと主張するようである。


 しかし,被告の主張は,以下のとおり失当である。

 商標法50条は,何人も,登録商標に係る指定商品等について,その登録商標の取消しの審判を請求することができる旨,及び,被請求人(商標権者)が,その請求に係る指定商品等のいずれかについて登録商標の使用を証明しない限り,登録商標の取消しを免れない旨を規定する。


 不使用取消しに係る審判請求人において,広範な範囲の指定商品等を不使用取消請求の対象として選択すれば,広範な範囲で取消しの効果を得ることができるが,他方,被請求人(商標権者)は,広範な範囲の指定商品等のいずれかについて,登録商標を使用していることを証明することによって,登録商標の取消しを回避することができ,立証負担は軽減されることになる。


 同条は,そのような公平の観点から規定されたものであり,不使用取消に係る審判請求人は,これらの得失を考慮して,取消しを求める指定商品の範囲を選択することになる。


 ところで,本件において,被告が請求した本件不使用取消しの審判は,指定商品「鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものであって,「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した,その余の鋼」についての登録商標の不使用を理由とするものではない(このような特定方法が,取消請求の適法な特定として許されるか否かについて,ここでは言及しない。)。そして,原告(登録商標権者)は,同審判において,本件商標を「鋼」について使用したこと証明できた以上,不使用を理由とする取消しを免れるのはいうまでもない。


 なお,本件商標の指定商品は,「鋼」とともに「建築用又は構築用のスチール製専用材料」の両者が併記して登録されているが,そのような指定商品の登録があるからといって,指定商品「鋼」の意義を,下位概念である指定商品を除く趣旨に解釈しなければならない根拠とはなり得ないのみならず,被告のした不使用取消審判の対象とした指定商品について,「建築用又は建築用のスチール製専用材料を除外した『鋼』」と解する根拠にもなり得ない。


(2) 小括

 以上のとおり,原告が登録商標を使用した原告商品は,被告において登録商標の取消を求めた指定商品である「鋼」に含まれるから,この点の原告の主張は理由がある。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。