●平成21(ラ)10006不正競争仮処分申立却下決定に対する抗告事件(1)

 本日は、『平成21(ラ)10006 不正競争仮処分申立却下決定に対する抗告事件 不正競争 民事仮処分 平成21年12月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091224113907.pdf)について取り上げます。


 本件は、不正競争仮処分申立却下決定に対する抗告事件で、本件抗告が棄却された事案です。


 本件では、まず、争点1(本件の準拠法)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


『1 争点1(本件の準拠法)について

 本件申立ては,いずれも日本法人である抗告人が相手方に対して,国内告知・流布及び国外告知・流布の差止めと,国外裁判ないし国外訴訟などの差止めを求めるものであって,抗告人が主張する被保全債権の有無を検討するには,本件申立てにおいて差止めの対象とされている以上の行為(以下「本件対象行為」という。)が差止めの認められる行為であるのか否かについても,また,外国人であるAが契約当事者となっている本件契約の効力についても,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)の規定に基づき,その準拠法が決定される必要がある。


(1) 不正競争防止法に基づく請求の準拠法

 抗告人は,相手方の国内の映像事業関係者に対する相手方書面の送付が不正競争防止法2条1項14号所定の「虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に該当することを前提に,相手方に対し,本件対象行為の差止めを求めているが,本件対象行為は,日本国内において行われる国内告知・流布,日本国内から行われる国外告知・流布を除き,日本国外における行為の差止めを求めるものであるから,不正競争防止法の適否の以前の問題として,通則法に基づいて,その差止めの準拠法を定めなければならない。


 しかるところ,抗告人の主張に係る差止請求権については,通則法に明文の規定がないが,本件対象行為が抗告人に対する関係で違法であることを原因としてその差止めを求めることができるというものであって,通則法17条にいう「不法行為」を原因として法の適用が問題となる場合であると解するのが相当であるから,同条所定の「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力」として,「加害行為の結果が発生した地の法」によるべきことになる。


 そうすると,日本国外における本件対象行為の差止めが認められるか否かについては,「加害行為の結果が発生した地」として,本件対象行為の結果が発生する当該外国となる。


 しかしながら,抗告人及び相手方とも我が国に本店所在地を有する日本法人であること,日本国外における本件対象行為についても,相手方が日本国内においてその意思決定を行うものと考えられること,国外における本件対象行為によって当該外国において結果が発生したとしても,その結果は日本国内の抗告人に対して影響を及ぼすものであることなどの事情に照らすと,明らかに当該外国よりも我が国が密接な関係がある他の地ということができるから,通則法20条により,その準拠法は日本国法と解するべきものである。


 したがって,日本国内における本件対象行為については,もとより不正競争防止法が適用されるほか,日本国外における本件対象行為についても同法がその準拠法として適用されることになる。


(2) 本件契約に基づく請求の準拠法

 抗告人の主張によると,本件契約は,通則法施行日以前の昭和51年,我が国において,日本法人である相手方とタイ王国人であるAとの間で締結されたものである。


 したがって,本件契約の成立及び効力については,通則法附則3条3項,法例7条により,当事者による準拠法の選択がある場合は当該選択地の法,当事者による準拠法の選択がない場合は行為地法(同条2項)によるべきものである。


 そして,本件契約書には,準拠法についての規定がなく,契約当事者である相手方及びAにおいて準拠法の選択について合意していたことを認めるに足りる証拠もないので,本件契約の成立及び効力の準拠法は,本件契約の行為地法である我が国の法によることになる。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。