●平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟(2)

Nbenrishi2009-12-09

 本日も、昨日に続いてm『平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟平成21年11月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091208132918.pdf)について取り上げます。


 本件では、争点2(展示に伴う複製(著作権法47条)として適法か(本件フリーペーパー及び本件パンフレットへの掲載に関して))についての判断と、争点3(時事の事件の報道のための利用(著作権法41条)として適法か(本件パンフレットへの掲載に関して))についての判断、さらには争点4(権利濫用の抗弁)についての判断も、参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 山門優、裁判官 舟橋伸行)は、


4 争点2(展示に伴う複製(著作権法47条)として適法か(本件フリーペーパー及び本件パンフレットへの掲載に関して))について

 被告は,本件フリーペーパーの綴じ込みカタログ及び本件パンフレットは,本件オークション又はその下見会で本件著作物を展示するに当たって観覧者に本件著作物を紹介するために作成されたものであって著作権法47条の「小冊子」に該当するので,これに本件著作物の画像を掲載したことは適法な行為であると主張する。


 著作権法47条は,「美術の著作物又は写真の著作物の原作品により,第25条に規定する権利を害することなく,これらの著作物を公に展示する者は,観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができる。」と定める。


 このように「小冊子」は「観覧者のためにこれらの著作物の解説又は紹介をすることを目的とする」ものであるとされていることからすれば,観覧する者であるか否かにかかわらず多数人に配布するものは,「小冊子」に当たらないと解するのが相当である。


 本件フリーペーパーの綴じ込みカタログについてみると,前記認定事実のとおり,本件フリーペーパーは,6万部が発行され,美術館,画廊,コンサートホール,劇場等の場所に備え置かれ無料で配布されていたものであり,その綴じ込みカタログは,本件オークション及びその下見会に参加し本件著作物を観覧する者であるか否かにかかわらず,自由に受け取ることができたものであるということができるから,「小冊子」に当たるものとはいえない。


 また,本件パンフレットについてみると,前記認定事実のとおり,本件オークションに参加するためには,本件冊子カタログを3000円で購入して参加申込みをする必要があり,被告会員であっても本件オークションへの参加資格があるわけではないところ,本件パンフレットは,オークションに参加するかどうかに関係なく9000人の被告会員全員に配布されたことからすれば,本件パンフレットについても,本件オークション及びその下見会に参加し本件著作物を観覧する者であるか否かにかかわらず配布されたものということができるから,「小冊子」に当たるものとはいえない。


 以上のとおりであるから,本件フリーペーパーの綴じ込みカタログ及び本件パンフレットは,いずれも著作権法47条にいう「小冊子」に該当しないというべきである。被告の主張は採用することができない。


5 争点3(時事の事件の報道のための利用(著作権法41条)として適法か(本件パンフレットへの掲載に関して))について

 被告は,本件パンフレットを配布したことについて,本件オークションが国内オークション会社として史上初めて香港で開催するオークションであるという「時事の事件」を伝えるための報道に当たり,著作権法41条により適法とされる行為であると主張する。


 しかしながら,前記認定事実のとおり,本件パンフレットには,「国内オークション史上初,香港オークション開催」の見出しが付けられ,「国内オークション史上初の海外開催となるエスト・ウエスト香港オークション。」との記載があるものの,その他は,開催日時や開催場所に関するものや,本件オークション等の宣伝というべき内容で占められており,被告が「時事の事件」であると主張する初の海外開催という事実に関連する記述は見当たらない。上記記載の内容に照らすと,本件パンフレットは,被告の開催する本件オークション等の宣伝広告を内容とするものであるというほかなく,時事の事件の報道であるということはできない。


被告の主張は採用することができない。


6 争点4(権利濫用の抗弁)について

 被告は,原告による著作権の行使は権利濫用に当たり許されないと主張する。

 美術品を譲渡するに当たっては,その美術品がどのようなものであるかという商品情報の提供が不可欠であるとして,そのための複製等が著作権者の許諾を得ることなく認められるべきであるとの要請があることはある程度理解することができないわけではない(平成22年1月1日から施行される改正著作権法47条の2では,美術品等の譲渡の申出のための複製等が一定の要件の下に許されることとされている。)。


 しかしながら,著作権法は,複製権等が制限される場合を列挙して規定しており,その権利制限規定に該当しない以上,上記のような複製の必要性が認められるからといって,当然に著作権者の権利を制限すべきものとはいえない。


 被告は原告らに無断で本件著作物の画像掲載を行ったものである(弁論の全趣旨)ことからすると,本件において,原告らの著作権の行使を権利の濫用であるとするような事情も認められない。


 また,被告は,オークションカタログへの無許諾の画像掲載は,確立した国際慣習である旨主張するものの,そのような慣習が存在することを認めるに足りる証拠はなく,また,仮にそのような慣習があったとしても,強行規定である著作権法の規定に反するものであるから,被告が行った複製行為が適法となるものでもなく,また,その複製行為に対する権利行使が濫用となるものでもない。


 以上のとおり,被告の権利濫用の抗弁は理由がない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。