●平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟(1)

Nbenrishi2009-12-08

 本日は、『平成21(ワ)31480 損害賠償請求事件 著作権 民事訴訟平成21年11月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091208132918.pdf)について取り上げます。


 本件は、著作権の損害賠償請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件では、まず、準拠法についての判断と、争点1(引用(著作権法32条1項)として適法か)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 山門優、裁判官 舟橋伸行)は、


2 準拠法について

(1) 本件における原告らの請求は,我が国に在住する原告らが著作権を有する著作物の画像を被告が複製又は送信可能化したことを理由とする損害賠償請求であるから,このような損害賠償請求権の成立及び効力に関して適用すべき法は,我が国の法と認められる法の適用に関する通則法17条)。


(2) 被告は,次のとおり主張し,香港法が適用される旨主張する。

 本件オークションは,香港で開催されるものであるから,主催会社である被告が日本の会社であるという理由では,カタログを通常の国際慣行とは異なるものにすることはできなかった。


 オークション開催地の法律によれば適法であるのに,日本国内での複製や配布が認められないことは,日本のオークション会社が世界ではハンディを負わねばならないことを意味するのであり,そのような解釈は,我が国文化の発展にとっても不利益となり,不当であることは明らかであり,本件オークションにまつわる一連の行為については,その中心的行為がされる地である香港の法を準拠法とするべきである。


(3) しかしながら,複製権の侵害が問題とされている本件フリーペーパー,本件パンフレット及び本件冊子カタログは我が国国内で配布されたことが認められ,かつ,いずれの当事者も我が国国内に住所及び本店を有することからすれば,香港が我が国と比べて明らかに密接な関係がある地であると認めることはできないから,被告の主張する事情は,上記(1)の判断を左右するものではない。


3 争点1(引用(著作権法32条1項)として適法か)について

 被告は,本件フリーペーパーの綴じ込みカタログ,本件パンフレット及び本件冊子カタログに本件著作物の画像を掲載したことは,いずれも著作権法32条1項の「引用」として適法な行為であると主張する。


 著作権法32条1項は,「公表された著作物は,引用して利用することができる。この場合において,その引用は,公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。」と定める。


 ここにいう引用とは,報道,批評,研究その他の目的で,自己の著作物の中に他人の著作物の全部又は一部を採録することをいうと解され,この引用に当たるというためには,引用を含む著作物の表現形式上,引用して利用する側の著作物と,引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ,かつ,両著作物の間に前者が主,後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきである最高裁判所第三小法廷昭和55年3月28日判決参照)。


 前記認定事実のとおり,本件フリーペーパーの綴じ込みカタログ,本件パンフレット及び本件冊子カタログの作品紹介部分は,作者名,作品名,画材及び原寸等の箇条書きがされた文字記載とともに,本件著作物を含む本件オークション出品作品を複製した画像が掲載されたものであったことが認められるものの,この文字記載部分は,資料的事項を箇条書きしたものであるから,著作物と評価できるものとはいえない。


 また,このような上記カタログ等の体裁からすれば,これらのカタログ等が出品作品の絵柄がどのようなものであるかを画像により見る者に伝えるためのものであり,作品の画像のほかに記載されている文字記載部分は作品の資料的な事項にすぎず,その表現も単に事実のみを箇条書きにしたものであることからすれば,これらカタログ等の主たる部分は作品の画像であることは明らかである。本件冊子カタログの作者紹介部分についても,文字記載部分は,単に作者の略歴を記載したものであるから,著作物とはいえず,また,作品の画像が主たる部分であると認められる。


 したがって,本件フリーペーパーの綴じ込みカタログ,本件パンフレット及び本件冊子カタログのいずれについても,本件著作物の掲載が「引用」に該当すると認めることができず,被告の主張は採用することができない。』


 と判示されました。


 明日以降に続きます。