●平成20(行ケ)10464 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

Nbenrishi2009-10-31

 本日は、『平成20(行ケ)10464 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「パンチプレス機における成形金型の制御装置」平成21年10月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091030151318.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の無効審決の取消しを求め、その請求が認容された事案です。


 本件では、無効審決の取消訴訟の係属中に本件特許権について特許請求の減縮を目的とする訂正についての判断が、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 本多知成)は、

『1 本件訂正審決の確定と本件審決の帰すう

(1) 第2次訂正は,請求項1に係る特許請求の範囲の記載を別紙1から別紙3のとおりとする訂正であって,その訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とすることは,明らかである(甲21,22,30)。また,本件審決が対象とした,請求項1に係る特許請求の範囲の記載を別紙2のとおりとする発明と比較しても,第2次訂正は,打抜加工が可能であることを特許請求の範囲に記載することにより,成形加工及び打抜加工の両方を行うパンチプレス機に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものといわざるを得ない。


 したがって,無効審決である本件審決の取消訴訟の係属中に本件特許権について特許請求の減縮を目的とする本件訂正審決が確定したのであるから,本件審決は,取り消されなければならない最高裁平成7年(行ツ)第204号平成11年3月9日第三小法廷判決・民集53巻3号303頁)。


(2) 被告は,第2次訂正が,乙1ないし10のとおり自明な事項を追加記載したにすぎないものであり,特許請求の範囲を減縮したものではなく,本件は上記判決の射程外であるなどと主張する。


 しかしながら,従来,成形加工及び打抜加工の両方を行うパンチプレス機が存在していたとしても(乙1〜10),他方,成形加工のみを行い打抜加工を行わないパンチプレス機も存在していたところ(甲32,33),第2次訂正は,成形加工及び打抜加工の両方を行うパンチプレス機に限定する趣旨のものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは,明らかである。


 そして,本件訂正審決が確定したことにより,明細書や特許請求の範囲等の記載が訂正され,出願時にさかのぼって第2次訂正後の明細書や特許請求の範囲等の記載により出願,特許査定等がされたものとみなされるから(特許法128条),第2次訂正前の明細書や特許請求の範囲等の記載に基づいて発明の要旨を認定した本件審決には,その認定に誤りがあることになる。


 そして,成形加工及び打抜加工の可能なパンチプレス機を対象とする本件訂正発明と,穴明機を対象とする引用発明の相違点について,改めて特許庁における審判の手続によって,審理判断すべきものである。


 また,被告は,本件訂正発明が本件審決において対比されたのと同一の引用発明により無効とされるべき場合であるとも主張する。


 しかしながら,本件訂正審決は,本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであると判断しており(甲30),本件訂正発明が本件審決において対比された引用発明により同様に無効とされるべきであるならば,本件訂正審決は特許法126条5項の規定に反していることとなるところ,そのような場合には,これを理由として改めて特許の無効の審判によりこれを無効とすることが予定されている(特許法123条1項8号)。


 被告は,第2次訂正後の特許請求の範囲を前提としても,前判決の拘束力により,本件特許は無効となるべきものであるとも主張する。


 しかしながら,取消判決の確定後,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には,減縮後の特許請求の範囲に新たな要件が付加され発明の要旨が変更されるのであるから,当該訂正によっても影響を受けない範囲における認定判断については格別という余地があるとしても,訂正前の特許請求の範囲に基づく発明の要旨を前提にした取消判決の拘束力は遮断され,再度の審決に当然に及ぶということはできない。


 よって,被告の主張は,いずれも採用することができない。


2 結論

 以上の次第であるから,本件審決は取り消されるべきものである。なお,訴訟費用については,行政事件訴訟法7条,民訴法62条,65条を適用し,原告らの負担とする。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。