●平成21(行ケ)10106 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

Nbenrishi2009-10-30

 本日は、『平成21(行ケ)10106 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「オーバーレイ表面実装抵抗器及びその製造方法」平成21年10月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091030153002.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、明示や引用はありませんが、拒絶審判における出願に係る発明の要旨の認定において、リパーゼ最高裁判決に従い認定している点で参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『(3) 以上のとおり,本件補正後の請求項1の記載には,原告が主張するような一義的に明確でない点は存しないから,明細書の他の記載を参酌した上で本件補正発明を認定する必要はないが,以下において,念のため,本願明細書の他の記載についても検討する。


 請求項2において「前記第1及び第2導電ストリップを前記抵抗性ストリップに接合する前記接合工程は,導電金属材の単一の導電ストリップを前記抵抗性ストリップのおもて面を完全に覆うようにして接合し,該単一の導電ストリップの中央部分を除去して前記抵抗性ストリップの中央部分を挟んで互いに離隔した前記第1導電ストリップと第2導電ストリップを形成することから成ることを特徴とする請求項1に記載の表面実装抵抗器の製造方法。」と記載し,単一の導電ストリップの中央部分を除去することによって第1と第2の導電ストリップを離隔させる場合には,離隔前の導電ストリップについて「単一の導電ストリップ」と明示している。


 また,原告が指摘する発明の詳細な説明の【0014】及び【0015】の記載は,「好ましい実施形態の説明」として記載されたものであり,請求項2に記載の発明における接合工程についての説明であると考えられる一方,同じく発明の詳細な説明において「発明の概要」について記載した【0010】には,本件補正発明についての上記1のような理解に沿う接合工程(別々に存在する「第1導電ストリップ」と「第2導電ストリップ」を「抵抗性ストリップ」のおもて面に接合する工程)についての記載が存在する。


 そうすると,本件明細書の他の記載を参酌したとしても,本件補正発明を原告が主張するようなものと理解することはできないといわざるを得ない。


(4) さらに,原告は,上記請求項2が請求項1の従属項であることから,第1及び第2導電ストリップが単一の導電ストリップの中央部分を除去して形成されたものであることは,請求項1においても同様であると主張するが,そのような除去工程によって形成された第1及び第2導電ストリップの存在は,請求項2において付加された除去工程の構成を前提としてはじめて読み取ることができるものであり,除去工程について規定していない請求項1に係る発明の構成として,第1及び第2導電ストリップが除去工程により形成されたものであると理解することはできないから,原告の主張を採用することはできない。


3 小括

 以上によると,本件補正発明の本件構成1及び2に原告が指摘するような一義的に明確でない点は存在しないから,発明の詳細な説明を参酌すれば,本件審決による本件補正発明の認定の誤りをいう原告の主張は,その前提において誤りであり,仮に本願明細書の他の記載を参酌したとしても,本件補正発明を原告が主張するようなものと理解することはできず,本件構成1及び2については上記1のとおりと理解すべきことに変わりはない。


 そうすると,本件審決による本件補正発明の認定に誤りはないというべきであり,本件補正を却下した本件審決の判断の誤りをいうに帰する原告主張の取消事由は理由がないといわざるを得ない。


4 結論

 以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。