●平成21(行ケ)10217審決取消請求事件 商標権「Taflotan」

Nbenrishi2009-10-23

 本日は、『平成21(行ケ)10217 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「Taflotan」平成21年10月22日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091023164630.pdf)について取り上げます。


 本件は、不使用を理由とする商標登録取消し審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、 取消事由2(法50条の「使用」に「輸出」を含むとした判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。



 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『2 取消事由2(法50条の「使用」に「輸出」を含むとした判断の誤り)について

(1) 不使用取消審判における「使用」の意義

 法50条1項は,継続して3年以上日本国内において指定商品についての登録商標の使用がされていないときに,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる旨を規定し,同条2項は,不使用取消審判においては,商標権者等が使用の事実を証明しない限り商標登録の取消しを免れない旨を規定しているが,法は,標章の「使用」に当たる行為についても法2条3項各号をもって定義しているところ,同項2号によると,「商品又は商品の包装の標章を付したものを譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し,又は電気通信回線を通じて提供する行為」は標章の「使用」に当たると規定されている。


 法50条に規定されている不使用取消審判の制度は,本来商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられる商標法上の保護を長期間にわたって使用されていない商標に与えたままにしておくことは,国民一般の利益を不当に侵害し,かつ,その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなるため,そのような商標登録を取り消すための制度であると解される。


 そして,この制度の適切な運用により,長期間使用されていない登録商標が取り消され,登録商標に対する信頼が相対的に確保されるのであり,これは商標を保護して商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図るという法の目的に合致するものであり,不使用取消審判の場面における「使用」の概念を法2条3項各号において定義されているものと別異に理解すべき理由はない。


 この点について,原告は,法2条3項2号に規定する標章の使用に当たる行為に「輸出」が加えられたのが法改正(判決注:平成18年法律第55号による改正をいう。)によるものであることから,法改正前には使用に当たらなかった輸出については,法改正後も使用に当たらないと解すべきであるとの趣旨の主張をするが,少なくとも法改正後の現在においては上記のとおりに解されるべきものであるから,原告の主張を採用することはできない。


 また,原告は,本件輸出行為が被告とその外国の子会社であるサンテン・オイ社との間で行われたものであることから,輸出に当たらないというべきであり,そうでなければ,脱法行為を助長するとの趣旨の主張もするが,各別の法人格である親子会社間の取引について,他の取引と別異に取り扱う理由はなく,その理は当該取引が親子会社間の輸出であっても異なるものではないところ,本件においては,本件輸出行為を認定し得るのであるから,この点の原告の主張も採用することはできない。


(2) 小括

 したがって,原告主張の取消事由2も理由がない。


3 結論

 以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。』


 と判示されました。


 なお、同日に出された『平成21(行ケ)10216 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「「タフロタン/Taflotan」平成21年10月22日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091023164157.pdf)についても判断も同旨のようです。


 詳細は、本判決文を参照してください。