●平成20(行ケ)10441 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

 本日は、『平成20(行ケ)10441 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「社交ダンス用フォーム矯正具」平成21年09月01日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090902105326.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2および取消事由3についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 高部眞規子、裁判官 杜下弘記)は、


『4 取消事由3について

(1) 原告は,本件審判の審理期間中に,原告が審判請求書の内容説明をしたいと申し出たにもかかわらず採用されず,これにより,正当な理由なくして争点整理が行われずに審決されたこと,審判事件答弁書の「代用品」と記載して本件発明1を想起するものではないと主張した点を正当な理由なくして採用しなかったのは公正で公平な判断をしなかったことが違法であると主張する。


(2) しかしながら,審判における審理は,審判請求書に記載された請求の趣旨及び理由について(特許法131条),職権による裁量をもって行われるのであり(同法152条,153条),本件審判の審理中に原告の内容説明の申し出を採用しなかったことや,答弁書の主張を採用しなかったことが,直ちに違法ということはできない。


 また,上記のとおり,本件発明1,2,4及び5は,引用発明1ないし11と同一でなく,また,引用発明1ないし11から容易に想到できたものでもないから,本件審決の結論に誤りがあったとはいえない。


 したがって,本件審判の手続が本件審決の結論に影響したということはできないから,原告の主張は採用することができない。


(3) 小括

 以上のとおり,取消事由3は理由がない。


5 取消事由4について

(1) 特許無効審判の審決取消訴訟において,その判断の違法が争われる場合には,専ら当該審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効理由に関するもののみが審理の対象とされるべきものであり,それ以外の無効理由については,上記訴訟において,これを審決の違法事由として主張し,裁判所の判断を求めることを許さないとするのが特許法の趣旨である。


 したがって,特許無効審判の取消訴訟においては,審判の手続において審理判断されなかった具体的な無効理由をもって,審決を違法とする取消事由として主張することができないものである(最高裁昭和42年(行ツ)第28号昭和51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照)。


(2) 証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。

ア 原告は,平成20年4月3日,本件特許を無効とすることを求める審判を請求し,その理由として,本件発明1,2,4及び5は,引用発明1ないし7から容易に発明することができたものであり,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと主張した(甲13)。


イ 原告は,平成20年8月25日,審判事件弁駁書を提出し,新たな無効理由の引用例として,引用例2の一部を追加するとともに,引用例8ないし11を追加し,本件発明1,2,4及び5が容易に発明することができたものであると主張した。また,同弁駁書には,本件発明1の要素技術が引用例1,2及び9とそれぞれ同一であるとの記載もある(甲15)。


ウ しかし,審判請求書にも審判事件弁駁書にも,本件発明1,4及び5の記載が明確でなく,実施可能要件を満たしていないとか,そのために容易に想到できるなどという記載はなく,本件審決も,上記の点について判断していない(甲13,15,弁論の全趣旨)。


(3) 原告は,本件発明1,4及び5の記載が明確でなく,実施可能要件を満たしていないとか,そのために容易に想到できるなどと主張するが,上記主張は,特許無効審判手続において原告が主張した無効理由にはないものであって,本件審決においても審理判断されていなかったものであるから,上記(1)に説示したとおり,本件訴訟において,原告がこれを取消事由として主張することは許されない。』


 と判示されました。


 なお、本件で引用している最高裁判決は、

●『昭和42(行ツ)28 審決取消請求 特許権 行政訴訟「メリヤス編み機事件」昭和51年03月10日 最高裁判所大法廷』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/170/053170_hanrei.pdf

です。

 詳細は、本判決文を参照してください。