●平成19(ネ)10056 不当利得返還等請求控訴事件 特許権 知財高裁

 本日は、『平成19(ネ)10056 不当利得返還等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年06月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090728114234.pdf)について取り上げます。


 本件は、職務発明の補償金の不当利得返還等請求控訴事件で、判決文が494頁もあり、ひさしぶりの目次付きです。


 本件では、まず、職務発明消滅時効についての判断等が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


消滅時効

(1) 本件における消滅時効の成否

 職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させる旨の契約やこれを定めた勤務規則等がある場合においては,従業者等は,当該契約・勤務規則等により,特許を受ける権利等を使用者等に承継させたときに,相当の対価の支払を受ける権利を取得する(特許法旧35条3項)。


 対価の額については,同条4項の規定があるので,契約・勤務規則等による額が同項により算定される額に満たないときは同項により算定される額に修正されるが,対価の支払時期についてはそのような規定はない。


 したがって,契約・勤務規則等に対価の支払時期が定められているときは,契約・勤務規則等の定めによる支払時期が到来するまでの間は,相当の対価の支払を受ける権利の行使につき法律上の障害があるものとして,その支払を求めることができないというべきである。


 そうすると,契約・勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。


 そして特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,その金額が同条により定められたいわば法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)と解するのが相当である。』


 と判示されました。


 時間がある時にじっくりと読みたいと思います。


 なお、この判示事項で引用している最高裁判決は、

●『平成13(受)1256 補償金請求事件 特許権 民事訴訟オリンパス職務発明事件」平成15年04月22日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/63C0C6C63BFAD25F49256DB00026A1E1.pdf

 です。


 詳細は、本判決文を参照してください。