●平成21(行ケ)10005審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 知財高裁

 本日は、『平成21(行ケ)10005 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟 平成21年05月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090526161029.pdf)について取り上げます。


 本件は、4条1項8号を理由とする拒絶審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、4条1項8号の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


1 取消事由1(法4条1項8号に係る法令解釈の誤り)について

(1) 本願商標は,引用会社の商号と同一の名称であること,原告が引用会社から本願商標登録の承諾を得ていないことは当事者間に争いがない。


 なお,引用会社の商号(甲44)の第2字目「廣」は「廣」の異体文字と認められるから,本願商標は,引用会社の商号と同一というべきである。


(2) 原告は,法4条1項8号の立法趣旨などにかんがみると,本願商標が引用会社の名称を含むものであって,かつ,原告が同社の承諾を得ていないとしても,同社の人格的利益を侵害しない場合には,同号に違反するものではなく,本願商標の登録が認められるべきであるとるる主張するが,同号は, 「その括弧書以外の部分に列挙された他人の肖像又は他人の氏名,名称,その著名な略称等を含む商標は,括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないとする規定である。


 その趣旨は,肖像,氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。」(最高裁平成15年(行ヒ)第265号平成16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁)上,また,「法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。


 すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。」(前掲最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決)のである。


 法4条1項8号は, 「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標については,括弧書きによる「その他人の承諾を得ているもの」を除き,商標登録を受けることができないと規定するにとどまるが,そこには,前記最高裁判例に判示されているとおりの意味があるのであって,原告の主張するように,同号の規定上,人格的利益の侵害のおそれがあることなどのその他の要件を加味して,その適否を考える余地はないというべきである。


 要するに,同号は,出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無,いずれかが周知著名であるということなどは考慮せず,「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標をもって商標登録を受けることは,そのこと自体によって,その氏名,名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし,その他人の承諾を得ている場合を除き,商標登録を受けることができないする趣旨に解されるべきものなのである。


(3) そうすると,本件においては,本願商標の登録出願時である平成19年6月21日及び拒絶査定に対する不服の審判請求に対する審決時である平成20年11月27日のいずれにおいても,本願商標と同一の商号である引用会社が存在しており,かつ,原告は,引用会社から本願商標の登録の承諾を得ていないものであることが明らかであるから,本願商標は,他人の名称を含む商標として,法4条1項8号により商標登録を受けることができないものであるといわざるを得ない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。