●平成20(行ケ)10262 審決取消請求事件「トンネル断面のマーキング

 本日は、『平成20(行ケ)10262 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「トンネル断面のマーキング方法事件」平成21年05月21日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090522100953.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消を求めたもので、その請求が棄却された事案です。


 本件では、前審決が前判決によって取り消され、審判に差し戻された場合、前判決の拘束力が及ぶか否かの判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 滝澤孝臣、裁判官 本多知成、裁判官 浅井憲)は、


『 本件審決は,第2の1の「本件訴訟に至る手続の経緯」で摘示したとおり,前審決が前判決によって取り消された後,原告らの訂正請求を認めた上,本件発明に係る特許を無効としたものであって,その判断に際しては,前判決の拘束力が及び,審判官が前判決の拘束力に従ってした審決は,その限りにおいて適法であり,本件訴訟においてこれを違法とすることはできないものであるから最高裁昭和63年(行ツ)第10号平成4年4月28日第三小法廷判決・民集46巻4号245頁参照),以下,原告ら主張の取消事由について検討するに当たっても,まず,原告らが誤りを主張する本件審決の判断が前判決の拘束力の及ぶものであるか否かを検討し,次に,前判決の拘束力が及ばないものについて,原告らの主張の当否を検討することとする。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。


 なお、本件中で引用している最高裁判決は、●『昭和63(行ツ)10 審決取消 特許権 行政訴訟「高速旋回式バレル研磨法事件」 平成4年04月28日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/934C4EDEBB08344A49256A8500311E8C.pdf)で、次のように判示しています。


 ・・・『特許無効審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消しの判決が確定したときは、審判官は特許法一八一条二項の規定に従い当該審判事件について更に審理を行い、審決をすることとなるが、審決取消訴訟行政事件訴訟法の適用を受けるから、再度の審理ないし審決には、同法三三条一項の規定により、右取消判決の拘束力が及ぶ。そして、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたるものであるから、審判官は取消判決の右認定判断に抵触する認定判断をすることは許されない。したがって、再度の審判手続において、審判官は、取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断につきこれを誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返すこと、あるいは右主張を裏付けるための新たな立証をすることを許すべきではなく、審判官が取消判決の拘束力に従ってした審決は、その限りにおいて適法であり、再度の審決取消訴訟においてこれを違法とすることができないのは当然である。


   このように、再度の審決取消訴訟においては、審判官が当該取消判決の主文のよって来る理由を含めて拘束力を受けるものである以上、その拘束力に従ってされた再度の審決に対し関係当事者がこれを違法として非難することは、確定した取消判決の判断自体を違法として非難することにほかならず、再度の審決の違法(取消)事由たり得ないのである(取消判決の拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断の当否それ自体は、再度の審決取消訴訟の審理の対象とならないのであるから、当事者が拘束力の及ぶ判決理由中の認定判断を誤りであるとして従前と同様の主張を繰り返し、これを裏付けるための新たな立証をすることは、およそ無意味な訴訟活動というほかはない)。


 2 以上に説示するところを特許無効審判事件の審決取消訴訟について具体的に考察すれば、特定の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたとはいえないとの理由により、審決の認定判断を誤りであるとしてこれが取り消されて確定した場合には、再度の審判手続に当該判決の拘束力が及ぶ結果、審判官は同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができたと認定判断することは許されないのであり、したがって、再度の審決取消訴訟において、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決の認定判断を誤りである(同一の引用例から当該発明を特許出願前に当業者が容易に発明することができた)として、これを裏付けるための新たな立証をし、更には裁判所がこれを採用して、取消判決の拘束力に従ってされた再度の審決を違法とすることが許されないことは明らかである。


追伸;<気になった記事>

●『VIZIO船井電機を特許侵害で提訴』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0905/22/news001.html
●『米VISIO船井電機を特許侵害で逆提訴 − 輸入販売禁止、損害賠償を要求』http://www.phileweb.com/news/d-av/200905/21/23617.html