●昭和48年に出された知財事件の最高裁判決

 本日は、昭和48年に出された知財事件で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている最高裁判決について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『昭和45(行ツ)5  実用新案権 行政訴訟「二段ベッド事件」昭和48年06月15日 最高裁判所第二小法廷』http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070313181009.pdf

 ・・・『登録実用新案の登録無効審判事件の係属中にその登録実用新案について訂正の審判が請求された場合において、その審決の先後関係をいかにすべきかは、審判を行なう特許庁の裁量に委ねられた事柄であつて、つねに、まず訂正審判事件につき審決をした後でなければ登録してはならないと解すべき法律上の根拠はない。


 そして、訂正審判制度無効の審決をの本来の趣旨からすれば、訂正審判事件の審決に先だち登録無効の審決をしたからといつて、所論のように権利者の訂正審判請求権を故なく喪失せしめたものということはできないし、また、右無効審決の取消訴訟において訂正請求の理由の有無を審理する必要のないことはもちろんである。


 したがつて、原判決に所論の違法はなく、論旨はすべて採用することができない。』、等と判示した最高裁判決。



●『昭和47(オ)395 特許権の通常実施権設定登録等請求 特許権 民事訴訟 昭和48年04月20日 最高裁判所第二小法廷 』http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/F5BE0BCCA0DC240149256A850031216E.pdf


・・・『原判決は、特許権につき許諾による通常実施権の設定を得た者は、特約による登録禁止その他特別の事情がないかぎり特許権者に対し右権利の設定登録を請求しうるものと解すべきであるとして、右通常実施権の設定を得た被上告人の設定登録手続請求を認容した第一審判決を是認している。


 しかしながら、特許権者から許諾による通常実施権の設定を受けても、その設定登録をする旨の約定が存しない限り、実施権者は、特許権者に対し、右権利の設定登録手続を請求することはできないものと解するのが相当である。


 その理由は、つぎのとおりである。


 すなわち、特許権の許諾による通常実施権は、専用実施権と異なり実施契約の締結のみによつて成立するものであり、その成立に当つて設定登録を必要とするものではなく、ただ、設定登録を経た通常実施権は、「その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる」(特許法九九条一項参照)ものとして、一種の排他的性格を有することとなるにすぎない。


 そして、通常実施権は、実施契約で定められた範囲内で成立するものであつて、許諾者は、通常実施権を設定するに当りこれに内容的、場所的、時間的制約を付することができることはもとより、同時に同内容の通常実施権を複数人に与えることもでき、また、実施契約に特段の定めが存しないかぎり、実施権を設定した後も自ら当該特許発明を実施することができるのである。


 これを実施権者側からみれば、許諾による通常実施権の設定を受けた者は、実施契約によつて定められた範囲内で当該特許発明を実施することができるが、その実施権を専有する訳ではなく、単に特許権者に対し右の実施を容認すべきことを請求する権利を有するにすぎないということができる。


 許諾による通常実施権がこのような権利である以上、当然には前記のような排他的性格を有するということはできず、また右性格を具有しないとその目的を達しえないものではないから、実施契約に際し通常実施権に右性格を与え、所定の登録をするか否かは、関係当事者間において自由に定めうるところと解するのが相当であり、したがつて、実施権者は当然には特許権者に対し通常実施権につき設定登録手続をとるべきことを求めることはできないというべく、これを求めることができるのはその旨の特約がある場合に限られるというべきである。


 してみると、これと異る見解のもとにかかる特約の存することを確定しないで上告人の設定登録義務を肯認した原判決には法令解釈の誤りがあり、この違法は原判決の結論に影響を与えることが明らかである。論旨は理由がある。』、等と判示した最高裁判決。