●平成19(ワ)8023 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟

 本日は、昨日に続いて、『平成19(ワ)8023 不正競争行為差止等請求事件 不正競争 民事訴訟 平成21年04月23日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090507162724.pdf)について取り上げます。


 本件では、「差止の可否,範囲」や、「原告の損害額」についての判断も参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三、裁判官 島村雅之、裁判官 北岡裕章)は、


6 差止の可否,範囲

 以上によれば,被告には,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為が認められるから,原告は,同法3条1項,3条2項に基づき,被告に対し,被告各表示及び「ark-angels.jp」のドメイン名の使用差止,被告各表示を付した物品等の廃棄及び被告のウェブサイトからの被告各表示の抹消を求めることができる。


 そして,上記の請求は,不正競争防止法2条1項1号の趣旨から,原告の事業と誤認,混同を生じるおそれのある,動物を扱う事業及びこれに付帯する事業で被告が行うものに限ることが相当である。


 被告が販売する物品に被告各表示を付していることについては,前提事実(2)イのとおりであるところ,物品の廃棄までを必要とするものか(表示の抹消だけが可能か)については必ずしも明らかとはいえない。


 しかし,通常,かかる物品自体に表示が付されているような場合,物品の価値を損なうことなく,表示だけの抹消を行うことには困難を伴うことが予想されること,被告において,表示だけの抹消が可能であり,物品の廃棄までを必要としないことについての主張,立証もない以上,被告各表示を付した物品の廃棄を命じることが相当である。


 また,被告のウェブサイトのドメイン名は「ark-angels.jp」であるところ,大文字,小文字の違いはあるものの,被告表示1と全く同じ表示であり,被告が,ウェブサイトのドメイン名として上記表示を使用することは,被告表示1の使用と同様,不正競争防止法2条1項1号に該当するというべきであり,上記ドメイン名の使用の差止を命じることもできる。


 なお,原告は,被告各表示の使用差止等について,選択的に他の請求もしているが,仮に,これらの請求が認容されるべきであるとしても,上記差止の範囲が変わることがないので,これらの請求については判断しない。


7 争点7(原告の損害額)について

 以上によれば,被告は,遅くとも,平成18年2月9日(原告から,「アークエンジェルズ」の名称の使用の中止を求められた日)以降,故意又は過失により不正競争行為を継続し,その間,前記4で認定した混同の事例が生じていることが認められる。


 広島ドッグぱーくの事件の真相は,本件において取り調べられた証拠からは不明といわざるを得ないが,少なくとも,一部のマスコミによって,募金の使途を巡り,被告が非難されたこと自体は,被告自身認めているところである。


 そうすると,前記のとおり,被告が被告各表示を使用することにより,被告と原告との混同が認められ,しかも,前記4のとおり,上記広島ドッグぱーく事件に原告が関与しているとの誤解が生じていたことが認められる以上,原告は,動物愛護活動について,平成2年ころから築いてきた信用を傷つけられ,無形の損害を被ったということができ,前記6の差止請求のほか,被告に対して損害賠償(原告は慰謝料と表現するが,個人の慰謝料に相当する無形損害の賠償を認めるべきである。)を求めることができる(民法709条,710条)。


 そこで,損害賠償額について検討するに,被告による不正競争行為の期間は2年以上になっていること,原告各表示と被告各表示につき,上記の混同の事例が生じていること等本件に顕れた一切の事情を総合すると,原告の損害額は,無形損害について100万円,弁護士費用について10万円と認めるのが相当である。


 なお,原告は,被告に対し,上記損害額に対する平成18年11月1日以降の遅延損害金の支払を求めているが,上記損害額を算定するにあたり,もっとも大きな影響を与えた混同の事例については,原告に送信されたメールによって裏付けることができるが(甲11の1〜10),その送信日は平成18年10月5日から平成19年10月6日であるところ,その多くが,平成18年度内に送られていることから,上記損害金に対する遅延損害金の発生については,平成19年1月1日以降とするのが相当である。


8 結論


 以上によれば,その余について判断するまでもなく,原告の本訴請求は,不正競争防止法2条1項1号,3条1項,3条2項に基づき,被告各表示及び「ark-angels.jp」のドメイン名の使用差止,被告各表示を付した商品等の廃棄及び被告のウェブサイトからの被告各表示の抹消並びに民法709条に基づき損害賠償金110万円及びこれに対する平成19年1月1日から支払済みまで民法所定年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文を,主文第1ないし第3項,第6,第8項の仮執行宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用し,主文第4,第5,第7項の仮執行宣言については,相当でないから付さないこととし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。