●昭和55年に出された知財事件の最高裁判決(1)

Nbenrishi2009-04-16

 本日は、昭和55年に出された知財事件で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている最高裁判決2件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『昭和52(行ツ)130 特許権 行政訴訟昭和55年12月18日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070314101430.pdf)


 ・・・『特許無効の審判請求人が被告となつている審決取消訴訟の係属中に被告が死亡した場合には、民訴法二〇八条に基づきその相続人その他法令により訴訟を続行すべき者において右訴訟の手続を受け継ぐべきものであつて、訴訟が終了するものではないと解するのが相当である。


 したがつて、所論のように本訴が原審に係る属中に被告Aが死亡したとしても、同被告の関係で訴訟の終了を宣言する判決をしなかつた原審の措置に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。』、等と判示した最高裁判決。


●『昭和53(行ツ)101 審決取消 特許権 行政訴訟「半サイズ映画フィルム録音装置事件」昭和55年12月18日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121516585256.pdf


・・・『本件につき適用がある旧特許法(大正一〇年法律第九六号)のもとにおいては、「二以上ノ発明ヲ包含スル特許出願ヲ二以上ノ出願ト為ス」ことができ(旧特許法九条一項)、「二以上ノ発明ヲ包含スル特許出願ヲ二以上ノ出願ト為サムトスル者ハ其ノ一発明二付テハ出願ヲ訂正シ同時ニ他ノ各発明ニ付新ナル出願ヲ為スヘシ」(旧特許法施行規則四四条一項)と定められていて、特許出願人は、二以の発明を包含するもとの出願につきその一部を分割して一又は二以上の新たな出願とすることができたものであるが、右の二以上の発明を包含する特許出願にあたるかどうかについては、これをもつぱら願書に添付された明細書中の特許請求の範囲における記載に限定して決すべきものか、それ以外の発明の詳細なる説明ないし願書添付図面の記載内容をも含めて決すべきものかについては、右の法文上からは明らかでない。


 しかしながら、特許制度の趣旨が、産業政策上の見地から、自己の工業上の発明を特許出願の方法で公開することにより社会における工業技術の豊富化に寄与した発明者に対し、公開の代償として、第三者との間の利害の適正な調和をはかりつつ発明を一定期間独占的、排他的に実施する権利を付与してこれを保護しようとするにあり、また、前記分割出願の制度を設けた趣旨が、特許法のとる一発明一出願主義のもとにおいて、一出願により二以上の発明につき特許出願をした出願人に対し、右出願を分割するという方法により各発明につきそれぞれその出願の時に遡つて出願がされたものと看做して特許を受けさせる途を開いた点にあることにかんがみ、かつ、他に異別の解釈を施すことを余儀なくさせるような特段の規定もみあたらないことを考慮するときは、もとの出願から分割して新たな出願とすることができる発明は、もとの出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載されたものに限られず、その要旨とする技術的事項のすべてがその発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度に記載されているならば、右明細書の発明の詳細なる説明ないし右願書に添付した図面に記載されているものであつても差し支えない、と解するのが相当である。


 次に、旧特許法のもとにおける右の分割出願が許される時期について考えるのに、同法はかかる出願をすることができる終期についてなんらの規定を設けていない。


 しかしながら、前記のように、特許出願により自己の発明内容を公開した出願人に対しては、第三者に対して不当に不測の損害を与えるおそれのない限り、できるだけこれらの発明について特許権を取得する機会を与えようとするのが、特許制度及び分割出願制度に一貫する制度の趣旨であるから、この趣旨に徴するときは、法律上特許出願につき出願公告の決定がある以前、あるいは願書に添付した明細書又は図面について補正することができる時又は期間内等に限つて分割出願をすることができるとの特段の定めがあれば格別、前記のようにこれがない旧特許法のもとにおいては、分割出願は、もとの出願について査定又は審決が確定するまでこれをすることができると解するのが相当であり、このように解しても、第三者に対し不当に不測の損害を与えるおそれがあるとは考えられないし、また、このように解するのが、我が国において批准している工業所有権の保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約四条G項の趣旨にもよく合致するものである。


 もつとも、前記のように、旧特許法施行規則四四条一項は、分割出願は、一発明について出願を訂正すると同時に、他の各発明について新たな出願をすることによつてしなければならないと定めているから、分割出願にあたつては、もとの出願の願書に添付した明細書又は図面の訂正をしなければならないところ、同規則一一条四項、旧特許法七五条五項によれば、明細書又は図面の訂正又は補充は、出願につき出願公告の決定があつた後においては、特許異議の申立の結果必要が生じて審査官から訂正を命じられたときでなければすることができないとされており、これによれば、もとの出願につき出願公告の決定があつた後は、明細書又は図面の訂正を必然的に伴う分割出願は手続上不可能であるかのような観がないではない。


 しかしながら、このような結果は、分割出願制度の趣旨が前記のとおりのものであるとする以上、到底容認することができないものであるから、単に分割出願の体裁を整えるために必要な明細書又は図面の訂正は、右旧特許法施行規則一一条四項の規定にかかわらず、これをすることができるものと解するのが相当である。それ故、出願公告の決定があつた後の分割出願であるとの一事によりこれが不適法であるとすることはできない。


 そうすると、本件審決のように、被上告人のした原判決判示の本願発明を目的とする分割出願が、もとの出願である原判決判示の原出願につき出願公告決定があつた後に、原出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載されず、発明の詳細なる説明に記載されていた発明を目的としてするものであつたことを理由に、これを不適法な分割出願であるとしてその出願日の遡及を認めることができないとすることはできず、これと同趣旨の見解のもとに本件審決を違法であるとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、いずれも採用することが出来ない。』、等と判示した最高裁判決。


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