●平成20(行ケ)10371審決取消請求事件 商標権「アイピーファーム」

Nbenrishi2009-04-02

 本日は、『平成20(行ケ)10371 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「アイピーファーム」平成21年03月24日知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090325161137.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録の無効審決の取り消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法3条1項6号の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 杜下弘記、裁判官 榎戸道也)は、


『1 商標法3条1項6号について

 商標法3条1項は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き,商標登録を受けることができる。」と規定した上,同項6号において「前各号に掲げるもののほか,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を掲げ,同号所定の商標について商標登録を受けることができないことを規定している。


2 本件商標について

 本件商標の構成は「アイピーファーム」の片仮名を標準文字で表してなるものであり,本件商標から「アイピーファーム」の称呼が生じることは明らかである。そして,「アイピー」からはアルファベットの「IP」が容易に想起され,「ファーム」からは英語の「FIRM」又は「FARM」が想起される。


 まず,「アイピー」についてみるに,甲第36及び第37号証によると,「知的財産」を意味する英語の「Intellectual Property」が「IP」と略して使用されることが認められるところ,このことは,本件商標に係る指定役務の需要者の多くにとってはよく知られた事柄であるというべきである。


 次に「ファーム」についてみるに,1999(平成11)年4月株式会社研究社発行の「リーダーズ英和辞典」には,「firm」について「合資経営の商会,商店, 一般の会社,企業;共同して働く一団の人びと,(特に)医療チーム;《俗》犯罪者の一団,ギャング;《俗》[euph](秘密)組織諜報機関・秘密捜査班など:a law 〜法律事務所.・・・」(915頁)と記載され,「farm」について「1a農地,農場,農園・・・;農家(farmhouse)・・・b飼育場,養殖場・・・」(879頁)と記載されているとおり,「FIRM」が会社等の人的組織を意味する語であり,「FARM」が農場や農園を意味する語であると認められるところ,これらの語はいずれも現代の我が国において広く知られているものと認められる。


 そうすると,本件商標に係る指定役務の需要者が本件商標(アイピーファーム)に接すれば,まず,「アイピー」から「IP」,すなわち,「知的財産」を想起するものと認められる。


 そして,その後に続く「ファーム」からは,上記のとおり,「FIRM」だけでなく,「FARM」も想起され得るが,これらの語の意味を知っている本件商標の指定役務に係る上記需要者にとって,「知的財産」と「FARM(農場)」を結びつけることが一般的であるとは考えにくい反面,「LAW FIRM」(法律事務所)の用例が相当程度浸透していることをも考慮すると,本件商標に係る指定役務の需要者は,「アイピー」に続く「ファーム」から,主として「FIRM」を想起するものと認められる。


 そうすると,例えば,上記「LAW FIRM」の語から法律事務所,すなわち,法律関係業務を取り扱う事務所の観念が生ずるように,本件商標(アイピーファーム)からは「IP FIRM」,すなわち,「知的財産関係業務を取り扱う事務所」の観念を生ずるものと認められる。


したがって,本件商標の表記は,その指定役務の需要者にとって,その指定役務に係る業務の内容を表したものにほかならないというべきである。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。