●平成19(ネ)10025 特許権に基づく差止請求権不存在確認等

 本日は、『平成19(ネ)10025 特許権に基づく差止請求権不存在確認等,売掛代金等請求控訴事件 特許権 民事訴訟 平成21年03月11日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090313103850.pdf)について取上げます。


 本件は、特許権に基づく差止請求権不存在確認等,売掛代金等請求控訴事件で、その一部が取り消され、取消部分に係る被控訴人の請求が棄却された事案です。


 本件では、独占通常実施権者に対する特許法102条1項類推適用についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 塚原朋一、裁判官 本多知成、裁判官 田中孝一)は、


(5 争点(7)(本件特許権侵害による損害賠償請求権の存否及びその額)について

1)特許法102条1項類推適用について

 証拠(甲A1,2,18,乙A1,2,乙B10)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人X 及び控訴会社代表者B は,平成14年1月ころ,控訴会社に対し,本件特許権の独占的通常実施権を許諾し,控訴会社は,この独占的通常実施権に基づき,本件特許権についての実施品である控訴会社製品を製造し,直接又は被控訴人を含む代理店を介し,百貨店における催事会場等に販売スペースを借り受けて印鑑の販売を行うという方法等によって,控訴会社製品を百貨店等に販売してきたことが認められる。


 ところで,特許法102条1項は,特許権の侵害製品の販売等により特許権者又は専用実施権者による特許製品の販売数量等が減少した場合,民法709条に基づき逸失利益の賠償を請求するにおいて,侵害行為と因果関係のある販売数量の減少の範囲を訴訟において立証することが困難であることから,特許権者又は専用実施権者の保護を図るため,侵害者の譲渡数量に権利者の製品の単位数量当たりの利益額を乗じた額を,実施能力に応じた額の限度において損害額とし,ただし,譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を権利者が販売することができないとする事情があるときは,侵害者がその旨を立証することにより,その事情に応じた額を控除するとする規定である。


そして,独占的通常実施権者は,当該特許権を独占的に実施して市場から利益を上げることができる点においては専用実施権者と実質的に異なるところはなく,同項の趣旨は,独占的通常実施権者にも妥当するから,独占的通常実施権者が侵害者の実施行為によって受けた損害についても,同項を類推適用することができる。』


 と判示されました。

 
 詳細は、本判決文を参照して下さい。