●平成19(ワ)28506「コンクリート構造物の機械施工方法事件」(1)

  昨日言い忘れましたが、特許法104条の3の特許無効の抗弁の場合、特許無効審判の請求は不要ですが、特許法104条の3の特許無効の抗弁に対する最抗弁の場合、
●『平成19(ワ)17762 損害賠償請求事件 実用新案権 民事訴訟「筆記具のクリップ取付装置事件」平成21年02月27日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090306100200.pdf)や、
●『平成15(ワ)16924 損害賠償等請求事件 特許権 民事訴訟「多関節搬送装置,その制御方法及び半導体製造装置事件」平成19年02月27日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070301170251.pdf)にて、


『(i)当該請求項について訂正審判請求ないし訂正請求をしたこと,
(ii)当該訂正が特許法126条の訂正要件を充たすこと,
(iii)当該訂正により,当該請求項について無効の抗弁で主張された無効理由が解消すること(特許法29条の新規性,容易想到性,同36条の明細書の記載要件等の無効理由が典型例として考えられる。) ,
(iv)被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属することを,主張立証すべきである。

 等と判示されているように、(i)の無効請求に係る請求項について訂正審判請求ないし訂正請求が要件ですので、注意する必要があります。特に、訂正審判および訂正請求は、時期的制限もありますので、この点でも注意が必要です。


 さて、本日は、『平成19(ワ)28506 不当利得返還請求事件 特許権 民事訴訟「コンクリート構造物の機械施工方法」平成21年02月18日 東京地方裁判所)(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090306101023.pdf)について取上げます。


 本件は、特許侵害に基づき不当利得の返還を請求したもので、その請求が認容された事案です。


 本件では、自己の特許発明を実施している場合でも、他社の特許発明の技術的範囲に属する場合には、原則として侵害となる、と判示している点で参考になる事案かと思います。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 清水節、裁判官 佐野信、裁判官 國分隆文)は、


『(3)その他の被告の主張について


 被告は,被告方法及び被告装置が,被告特許発明を実施するものであり,本件特許発明と全く相違するものであるから,本件特許権を侵害するものではないとして,被告特許発明と本件特許発明の相違点等について主張する。


 しかしながら,仮に,被告方法及び被告装置が被告特許発明を実施するものであったとしても,そのことが直ちに本件特許発明を実施していないことにはつながらないというべきである。


 そもそも,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないのであるから(特許法70条1項),当該特許発明の特許請求の範囲に記載された個々の具体的な構成要件の充足の検討を離れ,他の特許発明を実施していることを理由として,当該特許発明の技術的範囲に属しないとする主張は,失当であるといわざるを得ない。


 したがって,被告の上記主張を採用することはできず,その他,被告方法及び被告装置を用いた施工が本件特許発明を実施するものではないとして縷々主張するところは,いずれも採用することができない。


(4)小括

 以上によれば,被告方法及び被告装置の構成要件充足性について,次のようにいうことができる。』


と判示されました。


 なお、上記判決文中の判示事項である、

しかしながら,仮に,被告方法及び被告装置が被告特許発明を実施するものであったとしても,そのことが直ちに本件特許発明を実施していないことにはつながらないというべきである。


 そもそも,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないのであるから(特許法70条1項),当該特許発明の特許請求の範囲に記載された個々の具体的な構成要件の充足の検討を離れ,他の特許発明を実施していることを理由として,当該特許発明の技術的範囲に属しないとする主張は,失当であるといわざるを得ない。」

 は、昨日、弁理士会会員研修で、丸島儀一先生もおっしゃっていた、「特許権(の本質)は、あくまで排他権である。」、ということを裏付けているものと思います。