●平成19(ワ)1479 特許を受ける権利等譲渡代金請求事件

 本日は、『平成19(ワ)1479 特許を受ける権利等譲渡代金請求事件 特許権 民事訴訟「車両の連結並びに解放方法及び装置」平成21年02月26日 大阪地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090304113848.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許を受ける権利等をその使用者たる会社に譲渡し,同会社がその特許を受ける権利等を更に原告に譲渡し、原告が被告らに対し,その特許を受ける権利等を譲渡したとして,その各持分の譲渡代金の支払を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、譲渡代金の消滅時効の成否(前記第4の2の争点)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、大阪地裁(第26民事部 裁判長裁判官 山田知司、裁判官 村上誠子、裁判官 高松宏之)は、


『1 消滅時効の成否(前記第4の2の争点)について


(1) 消滅時効は,権利を行使することができる時から進行するところ(民法166条1項),権利を行使することができる時とは,法律上の障害がなくなったときをいうと解される。


(2) 本件においては,原告の主張によれば,本件各譲渡に際して,本件譲渡代金債権の弁済期の定めはなかったというのであるから,原告は,本件各譲渡時から本件譲渡代金債権を行使することができたというべきであり,本件譲渡代金債権の消滅時効は,本件各譲渡のときから進行する。


 原告の主張によれば,本件譲渡1は遅くとも昭和61年8月4日,本件譲渡2は遅くとも昭和61年11月12日に行われたというのであるから,本件譲渡代金債権は,本件各譲渡の日から5年の経過により時効消滅したものである。


 そして,前記第3の前提となる事実のとおり,被告らはその消滅時効を援用したので,原告の被告らに対する本件譲渡代金の請求はいずれも理由がない。


(3) この点,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯等からすれば,本件譲渡代金債権の行使は,平成16年12月21日までは取引社会の通念上不可能又は著しく困難であったから,時効は進行しないと主張する。


 しかし,原告が主張する事情ないし経緯は,本件譲渡代金債権を行使することについての事実上の障害にすぎず,法律上の障害ではないから,この点に関する原告の主張は失当である。


(4) また,原告は,原告と被告らとの優劣関係・取引関係,従前の交渉経緯等からすれば,被告らの消滅時効に関する主張は,著しく信義則に反し,許されないと主張する。


 しかし,原告の指摘する事情ないし経緯をもって,消滅時効を援用することが社会的に許容された範囲を逸脱し,又は信義則上許されない行動を取ったと評価することはできないから,被告らが消滅時効の主張ないし援用をすることが著しく信義則に違反するということはできない。


2 結論


 よって,原告の請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。