●平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟

Nbenrishi2009-03-01

 本日は、平成20(行ケ)10270 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟アバターの商品試着機能を備えた仮想空間回遊システム」平成21年02月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090227161321.pdf)について取上げます。


 本件は、補正却下の決定と共に拒絶審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が認容された事案です。


 本件では、補正却下の理由である、特許法17条の2第3項の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 田中信義、裁判官 榎戸道也、裁判官 杜下弘記)は、


『1 審決は,上記第2の3のとおり,本件補正について,発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2はいずれも当初明細書等に記載した事項の範囲内のものとは認められないことを理由として,これらを含む本件補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではないから,特許法17条の2第3項の規定に違反すると判断し,同法159条1項により読み替えて準用する同法53条1項の規定により本件補正を却下したものである。


 原告は,審決取消事由として,本件補正を却下した決定の誤りのみを主張し,先行補正2を却下した決定については争わないところ,本件補正は本件特許出願に係る特許請求の範囲の記載の請求項1の全文を対象としたものであり,拒絶査定不服審判請求の日から30日以内にしたものであるから,審決取消事由に理由があり,本件補正を却下した決定が誤りであれば,本件補正却下が適法であることを前提としてされた審決の本願発明の要旨認定は,その前提を誤ったものとなる。


 なお,本件補正に係る補正事項には,上記第2の2(1),(2)のとおり,先行補正1による補正後の特許請求の範囲の請求項2の記載の一部を「・・・追加試着アバター用データ生成送信手段」及び「(3)・・・」として付加する部分が含まれているところ,審決は,上記のとおり,同付加部分以外の補正事項である発明特定事項1の下線部分及び同2が,当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないことを理由として本件補正を却下したものであるから,却下決定の理由として審決が示したところが是認できなければ,「(3)・・・」を付加する補正が補正の要件を満たさないかどうかにかかわらず,同決定は誤りであるというほかなく,その場合,上記のとおり,審決は本願発明の要旨認定を誤ったものとなる。


 ところで,特許法17条の2第3項は「第1項の規定により明細書,特許請求の範囲又は図面について補正をするときは,・・・願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定するところ,補正が,当初明細書等の記載によって開示された技術的事項に対し,新たな技術的事項を導入しないものであると認められる限り,同項にいう「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に・・・記載した事項の範囲内において」するものであるというべきである。


 もっとも,当初明細書等に記載された事項は,通常,当該明細書等によって開示された技術的思想に関するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する補正を行う場合において,付加される補正事項が当初明細書等に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような補正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に・・・記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。


 以上を前提として,以下において,審決取消事由について検討する。


 ・・・省略・・・


4 以上によると,本件補正に係る補正事項の一部である発明特定事項1の下線部分及び発明特定事項2は,いずれも当初明細書に記載された事項又は当初明細書の記載から自明な事項であり,本件補正がこれらの補正事項を含むからといって,本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないということはできないから,審決取消事由は理由がある。


第6 結論

 以上のとおり,審決取消事由は理由があり,本件補正を却下した審決の判断は誤りであるから,審決は本願発明の要旨認定を誤ったものといわざるを得ず取消しを免れない。

 よって,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。