●平成20(行ケ)10125 審決取消請求事件 特許権「床構造体事件」

 本日は、『平成20(行ケ)10125 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「床構造体」平成21年02月18日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090220085603.pdf)について取上げます


 本件は、特許無効審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、引用発明における技術常識の参酌において重要なのは、当該引用発明の出願日当時における技術常識ではなく、本件特許の優先日当時の技術常識である、と判示された点で参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 塚原朋一、裁判官 本多知成、裁判官 田中孝一)は、


『1 取消事由1(特許法29条1項3号又は同条2項該当性の認定判断の誤り)について


(1) 甲1発明について


 ・・・省略・・・


(4) なお,原告は,甲37実験に用いられたカルファイン500が,甲1出願前には販売されていなかったことを問題とする。


 しかしながら,甲1発明への技術常識の参酌において重要なのは,本件特許の優先日(平成7年3月27日)当時の技術常識であるところ,この優先日当時,カルファイン500は既に販売されていたものであって(甲38 ,これを) 実験に用いたことに問題はない。


(5) そして,別紙試験対比表のとおり,原告側が行った甲45,48,49及び51の実験結果においても,切断時の伸びはすべて本件発明1の範囲となっており,また,永久伸びについても,除外すべき破断したサンプルを除くと,条件設定が異なる甲51の配合例Bのほかは,永久伸びが本件発明1の範囲内となっている。


(6) 以上によれば,甲37の実験結果を採用し,甲1発明の「硬化物」が,引っ張り試験における切断時の伸びが100%以上,永久伸び試験における永久伸びが50%以下という,本件発明1の「硬化物」と同じ特性を有しているものを含むとして,本件発明1は,甲1発明の一部を含み,実質的に甲1発明であるといえるとした審決の認定判断に誤りはないといえる。


 したがって,本件発明1は,特許法29条1項3号の規定に該当し,特許を受けることができないことになる。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。