●平成20(ネ)10061 損害賠償請求控訴事件 特許権 知財高裁

 本日は、『平成20(ネ)10061 損害賠償請求控訴事件 特許権 民事訴訟平成21年01月29日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090130150935.pdf)について取上げます。


 本件は、損害賠償請求控訴事件で、原判決が取り消され、東京地方裁判所へ移送された事案です。


 本件では、専属管轄に違反するかどうかは裁判所が職権で調査判断すべき事項であり、実施権の設定契約に関する訴訟の裁判管轄も、民事訴訟法6条1項により東京地方裁判所または大阪地方裁判所になる、と判示した点で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


『1 本件記録によれば,本件訴訟は,前記第2,1〜4記載のとおり,本件実施契約によって被控訴人Cから本件特許につき通常実施権の設定を受けた控訴人(一審原告)が,被控訴人Cは本件特許の特許権者である被控訴人A及び被控訴人Bから専用実施権の設定を受けているものの専用実施権について設定登録を受けていないから,専用実施権は無効なものでありこれに基づく本件通常実施権の設定も無効であると主張して,被控訴人A・B・Cに対し,不法行為又は債務不履行に基づき,連帯して5000万円の損害賠償金と遅延損害金の支払を求めた事案であり,争点は,本件実施契約が特許権の通常実施権設定としての効力を有するかである。


ところで,民訴法6条1項によれば,「特許権…に関する訴え」については,東京地裁又は大阪地裁の専属管轄である旨が規定され,ここにいう「特許権に関する訴え」は,特許権に関係する訴訟を広く含むものであって,特許権侵害を理由とする差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟,職務発明の対価の支払を求める訴訟などに限られず,本件のように特許権の専用実施権や通常実施権の設定契約に関する訴訟をも含むと解するのが相当である。


 そうすると,一審原告は東京都に住所を有し一審被告らはいずれも埼玉県に住所を有する本件訴訟の第一審の土地管轄は,民訴法6条1項によれば,東京地方裁判所に専属するということになるから,原判決は管轄違いの判決であって,取消しを免れない。


 なお,被控訴人A(財団法人グリーンクロスジャパン)は,控訴人が管轄違いの主張をすることは信義に反し許されないと主張するが,専属管轄に違反するかどうかは,裁判所が職権で調査判断しなければならない事項であるから,原審において前記の被控訴人A主張のような事実があるとしても,上記判断が左右されるものではない。


3 よって,民訴法309条により,原判決を取り消して本件を管轄裁判所たる東京地方裁判所に移送することとして,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


  なお、知財事件ではありませんが、昨年の7/26の日記(http://d.hatena.ne.jp/Nbenrishi/20080726)で取上げた最高裁事件である、


●『平成20(許)21 移送申立て却下決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件 平成20年07月18日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080723102717.pdf)


 では、地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され、被告から双方の合意に基づき同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合でも、裁判管轄は地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられる、と判示されています。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。