●平成2年に出された知財事件の最高裁判決

 本日は、平成2年に出された知財事件で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている最高裁判決1件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『昭和60(オ)1576 商標権侵害排除等参加 商標権 民事訴訟「ポパイ商標権侵害事件」平成2年07月20日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/18214089E57CE8FF49256A8500311EBC.pdf


 ・・・『 三 しかしながら、右判断中、被上告人の本件商標権に基づく乙標章に対する権利行使が権利の濫用に当たらないものとした部分は首肯することができない。その理由は次のとおりである。


  被上告人は、乙標章は、商標としての機能を備えて使用されていて、かつ本件商標に類似しており、しかも、単に「ポパイ」の漫画の主人公の名称を英文で表したものであるから、「ポパイ」の漫画から独立した著作物性がなく、著作物の複製とはいえないことを理由に、乙標章につき本件商標権に基づいてその侵害を理由に損害賠償を求めることが、本件商標権の行使に当たるとして、本訴請求をしている。


 しかしながら、前記事実関係からすると、本件商標登録出願当時既に、連載漫画の主人公「ポパイ」は、一貫した性格を持つ架空の人物像として、広く大衆の人気を得て世界に知られており、「ポパイ」の人物像は、日本国内を含む全世界に定着していたものということができる。


 そして、漫画の主人公「ポパイ」が想像上の人物であって、「POPEYE」ないし「ポパイ」なる語は、右主人公以外の何ものをも意味しない点を併せ考えると、「ポパイ」の名称は、漫画に描かれた主人公として想起される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものというべきである。したがって、乙標章がそれのみで成り立っている「POPEYE」の文字からは、「ポパイ」の人物像を直ちに連想するというのが、現在においてはもちろん、本件商標登録出願当時においても一般の理解であったのであり、本件商標も、「ポパイ」の漫画の主人公の人物像の観念、称呼を生じさせる以外の何ものでもないといわなければならない。


 以上によれば、本件商標は右人物像の著名性を無償で利用しているものに外ならないというべきであり、客観的に公正な競業秩序を維持することが商標法の法目的の一つとなっていることに照らすと、被上告人が、「ポパイ」の漫画の著作権者の許諾を得て乙標章を付した商品を販売している者に対して本件商標権の侵害を主張するのは、客観的に公正な競業秩序を乱すものとして、正に権利の濫用というほかない。』、


等と判示した最高裁判決。