●平成20(行ケ)10285審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「CIS」

 本当に毎日寒い日が続きますね!

 さて、本日は、『平成20(行ケ)10285 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「CIS」平成20年12月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081225153503.pdf)について取上げます。


 本件は、商標登録出願の拒絶審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標法4条1項11号の商標の類似の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 中平健、裁判官 上田洋幸)は、


『当裁判所は,本願商標は商標法4条1項11号に該当するとした審決に誤りはなく,原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。


1 本願商標と引用商標の各構成について

 本願商標は,前記第2,1のとおり,「CIS」と標準文字の欧文字3文字で横書きしてなり,指定商品を第9類「配線付きハードディスクドライブ用サスペンション」とするものである。他方,引用商標は,別紙(引用商標)のとおり,「CiS」の欧文字を横書きしてなり,このうち「C」と「S」が横方向に長く表記され,「i」は頭部の点が▼形状に表記されているものである。


 そして,指定商品は,第9類「ビデオカメラ・その他の電気通信機械器具,ビデオカメラを用いた遠隔監視装置,監視ビデオカメラを操作するためのコンピュータ用プログラムを記憶させた記録媒体・その他の電子応用機械器具及びその部品,工業用内視鏡及びその部品並びに附属品」とするものである。


2 本願商標と引用商標の類否

 本願商標も引用商標も,欧文字の「CIS」を横書きしてなる点で共通する。「C」と「S」は,本願商標では,標準文字であるのに対して,引用商標では,横方向に長く表記されているが,いずれも「C」,「S」と認識し得る。また「I」は,本願商標では,大文字で表記されているのに対し,引用商標は,小文字の頭部の点が▼形状に表記されているが,同形状が看者をして強い印象を与えることはない。以上によれば,本願商標と引用商標とは,外観において類似する。

 また,本願商標も引用商標も「シイアイエス」との共通の称呼が生じる。「CIS」は,格別の観念を生じるものではないと解するのが相当である(当事者間に争いはない)。


 本願商標に係る指定商品「配線付きハードディスクドライブ用サスペンション」は,引用商標に係る指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれる(当事者間に争いはない)。


 以上を総合すると,本願商標と引用商標とは,外観及び称呼において類似する(特定の観念は生じない。)商標であると判断できる。また,指定商品も共通する。


3 原告の主張に対して

 これに対して,原告は,本願商標に係る取引の実情として,?原告が指定商品に関する特許を有すること,?引用商標の商標権者は,本願商標の指定商品を製造していないこと,?原告は,本願商標に係る指定商品について,全世界で30.8%のシエアを占めており,そのうちの80%が本願商標を付したものであること等の取引の実情が存するので,これらの実情を併せ考慮すると,本願商標と引用商標とは出所に誤認混同を生ずることなく,両者は類似するとはいえないと主張する。


 しかし,原告の主張は失当である。

 すなわち,商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情は,当該商標が現に,当該指定商品に使用されている特殊的,限定的な実情に限定して理解されるべきではなく,当該指定商品についてのより一般的,恒常的な実情,例えば,取引方法,流通経路,需要者層,商標の使用状況等を総合した取引の実情を含めて理解されるべきである(最高裁判 第一小法廷昭和49年4月25日判決・昭和47年(行ツ)第33号参照)。


 原告主張に係る取引の実情は,いずれも,現在の取引の実情の一側面を今後も変化する余地のないものとして挙げているにとどまるものであって,採用の余地はない。


 本願商標は,引用商標と比較して,類似性の程度が高い点をも考慮するならば,本願商標をその指定商品(類似商品を含む。)に使用した場合には引用商標との間で出所に混同混同を生ずるおそれがあることは明らかである。原告の上記主張は,採用できない。


4 結論

 以上のとおり,原告の主張する取消事由には理由がなく,審決を取り消すべきその他の誤りは認められない。


 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は,本判決文を参照して下さい。