●平成20(行ケ)10254審決取消請求事件「遊技機の回転リールユニット

 今日から会社が休みになりました。外は本当に寒いので、年賀状などを書いたり、部屋を掃除等しています。 


 さて、本日は、『平成20(行ケ)10254 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「遊技機の回転リールユニット」平成20年12月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081226105833.pdf)について取上げます。


 本件は、訂正審判の棄却審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、取消事由2の訂正審判における新規事項追加に関する判断において、知財高裁が大合議で示した新しい新規事項追加の判断基準により判断している点で、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 塚原朋一、裁判官 本多知成、裁判官 田中孝一)は、


『2 取消事由2(新規事項追加に関する判断の誤り)について


 本件事案にかんがみ,まず,「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は ,種類ごとに異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との訂正事項(訂正事項2)が新規事項の追加に当たるかについて判断する。


(1)まず,特許法126条3項にいう「願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」との文言について,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,訂正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該訂正は「明細書,特許請求の範囲又は図面… ,に記載した事項の範囲内において」するものということができる。


 もっとも,明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された事項は,通常,当該明細書,特許請求の範囲又は図面によって開示された技術的思想に関するものであるから,例えば,特許請求の範囲の減縮を目的として,特許請求の範囲に限定を付加する訂正を行う場合において,付加される訂正事項が当該明細書,特許請求の範囲又は図面に明示的に記載されている場合や,その記載から自明である事項である場合には,そのような訂正は,特段の事情のない限り,新たな技術的事項を導入しないものであると認められ,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものであるということができる。


(2)そこで本件訂正(訂正事項2)について見ると,そもそも訂正事項2は,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は,種類ごとに異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との構成を採用しようとするものである。


 しかるに,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)を精査しても,「種類ごとに異なる色に着色」することが,半透明部分を形成することと関連して,どのような技術的意義を有するかについて当業者が読み取ることができる記載部分が存在するとは認められず,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)の記載を総合しても,「種類ごとに異なる色に着色」することが,半透明部分を形成することと関連して,どのような技術的意義を有するかについて当業者が導くことができるとは認められない。この点,訂正前明細書(甲13)の段落【0025】には,「各シンボルは上記実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが,各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ,最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。」との記載があるが,これも,各シンボルがリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれていることを示すものにすぎない。


 したがって,訂正前明細書,特許請求の範囲又は図面(甲13)の記載を総合しても,当業者が,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構成を採用することの技術的意義について導くことができるとはいえず,本件訂正発明のように,異なる種類の複数の特定図柄の一部分に半透明部分を形成するという構成において,「種類ごとに異なる色に着色」するという構成を採用することの技術的意義は不明というほかない。そうすると,たとえ属性ごとに各図柄を色で塗り分けること自体は周知の事項であるとしても,そのような技術的意義が不明である構成を新たに導入することについてまで,同様に周知の事項であるということはできない。


 以上によれば「特定図柄の半透明に形成された部分以外の部分は,種類ごとに,異なる色に着色されると共に,遮光性が付された」との訂正事項(訂正事項2)は,「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項の範囲内において」するものということはできず,新規事項の追加に当たるといわなければならない。 』


 と判示されました。


 本件でも、『「明細書,特許請求の範囲又は図面…に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である。』という、知財高裁が大合議で示した新しい新規事項追加の判断基準により判断しています。

 
 詳細は、本判決文を参照して下さい。