●平成19(行ケ)10425審決取消請求「記録媒体用ディスクの収納ケース

 本日は、『平成19(行ケ)10425 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「記録媒体用ディスクの収納ケース」平成20年12月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081225154350.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審決の取消しを求めた事案で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、審判段階において周知技術の参照資料について反論の機会を与えなかったことが手続上の誤りに相当するかの判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 中平健、裁判官 上田洋幸)は、


2 周知技術の参照資料について反論の機会を与えなかった手続上の誤り(取消事由2)について


 153条2項は,審判長は,審判において当事者が申し立てない理由について審理したときは,その審理の結果を当事者に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えなければならない旨規定する。その趣旨は,当事者が申し立てない理由は,当事者が審判請求の理由として認識していない可能性があるため,改めて当事者に意見を述べる機会を与えることにより,当事者に検討と意見表明の機会を与えることにある。


 ところで,周知技術は,当業者にとっては例示する必要がない程よく知られている技術であり,当業者が認識しているといえるから,周知技術を示す資料を追加したとしても,常に,改めて当事者に検討と意見表明の機会を与える必要があるとはいえない。


 本件において,前記のとおり,蓋付きのケースにおいて,蓋をある程度開いた状態で蓋の端縁部がケースの端縁部に当接する構造は,その仕組みが比較的単純であることから,その内容に照らして,本件優先日の当時,周知であったものと認められ,審決では,甲21,22は,このような周知技術を示す参照資料として示されたものと解すことができる。


 したがって,このような周知技術を示す資料を追加したことに対して,当事者に意見を申し立てる機会(153条2項)を与える必要はなく,訂正の機会(134条の2第1項)を与える必要もないというべきである。


 なお,134条2項の規定による答弁書提出の機会は,特許無効審判の請求書の理由の補正が許可された場合に与えられるものであり,周知技術を示す資料の追加が行われたにすぎない本件においては,同項の適用の余地はない。


 したがって,審判合議体が無効審判の手続の過程において原告に対し甲21,22を示さなかったことは,手続上の誤りということはできず,取消事由2は,理由がない。


3 結論

 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。原告はその他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。

 よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。