●平成13年に出された知財事件の最高裁判決(2)

  本日は、平成13年に出された知財事件の最高裁判決で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている最高裁判決2件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●『平成12(受)798 著作権 民事訴訟キャンディ・キャンディ事件」平成13年10月25日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070314112050.pdf

 ・・・『原審の適法に確定したところによれば,本件連載漫画は,被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し,これを400字詰め原稿用紙30枚から50枚程度の小説形式の原稿にし,上告人において,漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き,おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。


 この事実関係によれば,本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする。二次的著作物であるということができるから,被上告人は,本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして,二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し,原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し,上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから,上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。


 したがって,被上告人は,上告人が本件連載漫画の主人公キャンディを描いた本件原画を合意によることなく作成し,複製し,又は配布することの差止めを求めることができるというべきである。


 以上によれば,被上告人が本件連載漫画の一部である本件コマ絵及び本件連載漫画の主人公キャンディの絵の複製である本件表紙絵につき原著作者の権利を有することの確認と,本件原画を作成し,複製し,又は配布することの差止めを求める被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断は,正当として是認することができる。上記判断は,所論引用の判例に抵触するものではない。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。』、 等と判示した最高裁判決。


●『平成11(受)922 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟江差追分事件」平成13年06月28日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120633963223.pdf

 ・・・『 (1) 言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。


そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である。

 ・・・

 したがって,本件ナレーションは,本件著作物に依拠して創作されたものであるが,本件プロローグと同一性を有する部分は,表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分であって,本件ナレーションの表現から本件プロローグの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから,本件プロローグを翻案したものとはいえない。』、 等と判示した最高裁判決。


追伸;<気になった記事>

●『「まねきTV」は適法 知財高裁、テレビ局側の控訴を棄却』http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0812/16/news107.html

 ・・・この記事の財高裁の判決文は、『平成20(ネ)10059 著作権侵害差止等請求控訴事件 著作権 民事訴訟 平成20年12月15日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081216170214.pdf)になります。