●平成13年に出された知財事件の最高裁判決(1)

 本日は、平成13年に出された知財事件の最高裁判決で、裁判所HP(http://www.courts.go.jp/)に掲載されている最高裁判決2件について、下記の通り、簡単に紹介します。


●平成9(オ)1918 特許出願人名義変更届手続請求事件 特許権 民事訴訟,「生ゴミ処理装置事件」平成13年06月12日 最高裁判所第三小法廷(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/09C26E266C66163249256B3A00267541.pdf

 …『上記2の事実関係によれば,本件発明につき特許を受けるべき真の権利者は上告人及び上告補助参加人であり,被上告人は特許を受ける権利を有しない無権利者であって,上告人は,被上告人の行為によって,財産的利益である特許を受ける権利の持分を失ったのに対し,被上告人は,法律上の原因なしに,本件特許権の持分を得ているということができる。


 また,上記2の事実関係の下においては,本件特許権は,上告人がした本件特許出願について特許法所定の手続を経て設定の登録がされたものであって,上告人の有していた特許を受ける権利と連続性を有し,それが変形したものであると評価することができる。


 他方,上告人は,本件特許権につき特許無効の審判を請求することはできるものの,特許無効の審決を経て本件発明につき改めて特許出願をしたとしても,本件特許出願につき既に出願公開がされていることを理由に特許出願が拒絶され,本件発明について上告人が特許権者となることはできない結果になるのであって,それが不当であることは明らかである(しかも,本件特許権につき特許無効の審決がされることによって,真の権利者であることにつき争いのない上告補助参加人までもが権利を失うことになるとすると,本件において特許無効の審判手続を経るべきものとするのは,一層適当でないと考えられる。)。


 また,上告人は,特許を受ける権利を侵害されたことを理由として不法行為による損害賠償を請求する余地があるとはいえ,これによって本件発明につき特許権の設定の登録を受けていれば得られたであろう利益を十分に回復できるとはいい難い。その上,上告人は,被上告人に対し本件訴訟を提起して,本件発明につき特許を受ける権利の持分を有することの確認を求めていたのであるから,この訴訟の係属中に特許権の設定の登録がされたことをもって,この確認請求を不適法とし,さらに,本件特許権の移転登録手続請求への訴えの変更も認めないとすることは,上告人の保護に欠けるのみならず,訴訟経済にも反するというべきである。


 これらの不都合を是正するためには,特許無効の審判手続を経るべきものとして本件特許出願から生じた本件特許権自体を消滅させるのではなく,被上告人の有する本件特許権の共有者としての地位を上告人に承継させて,上告人を本件特許権の共有者であるとして取り扱えば足りるのであって,そのための方法としては,被上告人から上告人へ本件特許権の持分の移転登録を認めるのが,最も簡明かつ直接的であるということができる。』、と判示した最高裁判決。


●『平成12(行ヒ)172  商標権 行政訴訟PALM SPRINGS POLO CLUB事件」平成13年07月06日 最高裁判所第二小法廷 』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070314113913.pdf

 …『ウ 本願商標を構成する「POLO」, 「ポロ」の語以外の語句のうち,「PALM SPRINGS」,「パームスプリングス」がアメリカ合衆国にある保養地の名称として知られていること,「CLUB」,「クラブ」が同好の者が集った団体を意味する日常用語であることからすれば,本願商標から「パームスプリングスにあるポロ競技のクラブ」という観念が生じ得ることは,原判決の判示するとおりである。


 しかし,1個の商標から複数の観念が生ずることはしばしばあり得るところ,引用商標の周知著名性の程度の高さや,本願商標と引用商標とにおける商品の同一性並びに取引者及び需要者の共通性に照らすと,本願商標がその指定商品に使用されたときは,その構成中の「POLO」,「ポロ」の部分がこれに接する取引者及び需要者の注意を特に強く引くであろうことは容易に予想できるのであって,本願商標からは,上記の観念とともに,ラルフ・ローレン若しくはその経営する会社又はこれらと緊密な関係にある営業主の業務に係る商品であるとの観念も生ずるということができる。


(3) 以上のとおり,本願商標は引用商標と同一の部分をその構成の一部に含む結合商標であって,その外観,称呼及び観念上,この同一の部分がその余の部分から分離して認識され得るものであることに加え,引用商標の周知著名性の程度が高く,しかも,本願商標の指定商品と引用商標の使用されている商品とが重複し,両者の取引者及び需要者も共通している。


 これらの事情を総合的に判断すれば,本願商標は,これに接した取引者及び需要者に対し引用商標を連想させて商品の出所につき誤認を生じさせるものであり,その商標登録を認めた場合には,引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じ兼ねないと考えられる。


 そうすると,本願商標は,本号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると判断するのが相当であって,引用商標の独創性の程度が造語による商標に比して低いことは,この判断を左右するものでないというべきである。』、と判示した最高裁判決。