●平成20(行ケ)10094「半導体パッケージの製造法及び半導体パッケー

 本日は、『平成20(行ケ)10094 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟半導体パッケージの製造法及び半導体パッケージ」平成20年11月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081128115304.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許の無効審判における特許無効審決の取消しを求めた審決取消訴訟で、その請求が認容された事案です。


  本件では、特許無効審判手続における訂正請求による訂正の効果は、いずれも請求項ごとに生ずる、と判断した点で、特許異議申立事件における訂正の請求について、訂正審判とは異なり請求項毎に判断する必要がある、と判示した先の最高裁判決である、『平成19(行ヒ)318 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源」平成20年07月10日 最高裁判所第一小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080710145411.pdf)を、特許無効審判における訂正の請求に当てはめた判決になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 中平健、裁判官 上田洋幸)は、


『本件審決には,取消事由1に係る違法が存在するものと判断する。その理由は,以下のとおりである。


 すなわち,昭和62年法律第27号による改正により,いわゆる改善多項制が導入され,平成5年法律第26号による改正により,無効審判における訂正請求の制度が導入され,平成11年法律第41号による改正により,特許無効審判において,無効審判請求されている請求項の訂正と無効審判請求されていない請求項の訂正を含む訂正請求の独立特許要件は,無効審判請求がされていない請求項の訂正についてのみ判断することとされた。


 このような制度の下で,特許無効審判手続における特許の有効性の判断及び訂正請求による訂正の効果は,いずれも請求項ごとに生ずるものというべきである。


 特許法は,2以上の請求項に係る特許について請求項ごとに特許無効審判請求をすることができるとしており(123条1項柱書),特許無効審判の被請求人は,訂正請求することができるとしているのであるから(134条の2),無効審判請求されている請求項についての訂正請求は,請求項ごとに申立てをすることができる無効審判請求に対する,特許権者側の防御手段としての実質を有するものと認められる。


 このような訂正請求をする特許権者は,各請求項ごとに個別に訂正を求めるものと理解するのが相当であり,また,このような各請求項ごとの個別の訂正が認められないとするならば,無効審判事件における攻撃防御の均衡を著しく欠くことになるといえる。


 このように,無効審判請求については,各請求項ごとに個別に無効審判請求することが許されている点に鑑みると,各請求項ごとに無効審判請求の当否が個別に判断されることに対応して,無効審判請求がされている請求項についての訂正請求についても,各請求項ごとに個別に訂正請求することが許容され,その許否も各請求項ごとに個別に判断されるべきと考えるのが合理的である。


 以上のとおり,特許無効審判手続における特許の有効性の判断及び訂正請求による訂正の効果は,いずれも請求項ごとに生じ,その確定時期も請求項ごとに異なるものというべきである。


 そうすると,2以上の請求項を対象とする特許無効審判の手続において,無効審判請求がされている2以上の請求項について訂正請求がされ,それが特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である場合には,訂正の対象になっている請求項ごとに個別にその許否が判断されるべきものであるから,そのうちの1つの請求項についての訂正請求が許されないことのみを理由として,他の請求項についての訂正事項を含む訂正の全部を一体として認めないとすることは許されない。


 そして,この理は,特許無効審判の手続において,無効審判請求の対象とされている請求項及び無効審判請求の対象とされていない請求項の双方について訂正請求がされた場合においても同様であって,無効審判請求の対象とされていない請求項についての訂正請求が許されないことのみを理由(この場合,独立特許要件を欠くという理由も含む。)として,無効審判請求の対象とされている請求項についての訂正請求を認めないとすることは許されない。


 本件においては,請求項1に係る発明についての特許について無効審判請求がされ,無効審判において,無効審判請求の対象とされている請求項1のみならず,無効審判請求の対象とされていない請求項2及びその他の請求項についても訂正請求がされたところ,本件審決は,無効審判請求の対象とされていない請求項2についての訂正請求が独立特許要件を欠くことのみを理由として,本件訂正は認められないとした上で,請求項1に係る発明についての特許を無効と判断したのであるから,本件審決には,上記説示した点に反する違法がある。したがって,原告主張に係る取消事由1は,理由がある。


 よって,本訴請求は理由があるから認容し,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 なお、同日に出された、

●『平成20(行ケ)10093 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟半導体パッケージの製造法及び半導体パッケージ」平成20年11月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081128113720.pdf)と、


●『平成20(行ケ)10095 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟半導体パッケージの製造法及び半導体パッケージ」平成20年11月27日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081128120050.pdf

 も同旨の判決のようです。


 詳細は、判決文を参照してください。