●平成19(行ケ)10331行政訴訟「開口点眼容器及びそれの製造方法」

 本日は、『平成19(行ケ)10331 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「開口点眼容器及びそれの製造方法」平成20年10月28日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081028154926.pdf)について取上げます。


 本件は、特許無効審決の取消しを求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本件における原告の訴訟活動及び争点設定に関する当裁判所の意見が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 齊木教朗、裁判官 嶋末和秀)は、


『4 結語

 以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。その他,原告は,縷々主張するが,理由がない。よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。


 なお,本件における原告の訴訟活動及び争点設定に関して,当裁判所の意見を述べる。


 民事訴訟法2条は,「・・・当事者は,信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない」と規定する。同規定は,公正かつ迅速な訴訟手続を行い適切な司法判断を得るという法の理念に即して,民事の紛争の解決が実現されることを目的として,訴訟を追行する訴訟当事者に対して,誠実な訴訟活動をするよう努める義務を負わせることとしたものである。


 同規定の上記の趣旨に照らすならば,当事者が,客観的に明白な事実に反し,また,自己が主観的に確信した真実に反して,徒に主張や立証活動を行ったり,逆に,反対当事者が,上記のような事実に基づいて,徒に,相手方の主張を否認したり,反対立証を重ねるような場合には,民事訴訟法2条に規定する信義誠実の原則に反する訴訟活動であると解すべきである。


 ところで,本件取消訴訟をみると,原告は,本件発明1に限っても,審決のした本件発明1と甲1発明Aとの一致点及び相違点(6個)の認定及び相違点(6個)に関する容易想到性の判断,並びに審判手続のすべてに誤りがあると主張して,審決を取り消すべきであるとしている(原告第1,第2準備書面,合計59頁)。


 しかし,(i)およそ,当事者の主張,立証を尽くした審判手続を経由した審決について,その理由において述べられた認定及び判断のすべての事項があまねく誤りであるということは,特段の事情のない限り,想定しがたい。


 また,(ii)本件において,本件発明と引用発明との間の一致点及び相違点の認定に誤りがあるとの原告の主張は,実質的には,相違点についての容易想到性の判断に誤りがあるとの主張と共通するものと解される。


 そのような点を考慮するならば,本件において,原告が,争点を整理し,絞り込みをすることなく,漫然と,審決が理由中で述べたあらゆる事項について誤りがあると主張して,取消訴訟における争点としたことは,民事訴訟法2条の趣旨に反する信義誠実を欠く訴訟活動であるといわざるを得ない。

 と判示されました。


なお、本件の裁判長は、『平成11(ヨ)22125 不正競争仮処分事件 不正競争 民事仮処分「iMAC事件」平成11年09月20日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/E2782AC4AC47549949256A7700082C26.pdf)等の事件を扱った飯村敏明裁判官です。


 詳細は、本判決文を参照してください。