●平成14(行ケ)533特許取消決定取消事件「記録媒体の光学読取装置」

Nbenrishi2008-10-27

  本日は、『平成14(行ケ)533 特許取消決定取消請求事件 特許権 行政訴訟「記録媒体の光学読取装置」平成16年04月20日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/B0521A63F099ECEB49256EE8002622BD.pdf)について取上げます。


 本件は、特許異議申立における特許取消の決定の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が認容された事案です。


 本件でも、進歩性違反により拒絶する際、2つの引用例の組み合わせに阻害要因があると判断された点で参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 山下和明、裁判官 若林辰繁、裁判官 高瀬順久)は、


2 決定の判断の誤りについて


(1) 決定は,甲4発明の認定において,甲4公報の「〔発明の実施例〕」の記載である「以下,この発明の第一の実施例を第10図〜第15図について説明する。・・・」を引用している(決定書9頁28行目)。


  甲4公報には,第10図ないし第15図,そのほかの図面を始め,そのどこにおいても,レーザー源,レンズ,4分の1波長板グレーティングレンズ(手段)が一つの光軸上に配置され,その結果,光ディスクからの反射光だけでなく,レーザー源からの放射光も,上記グレーティングレンズ(手段)を通過する構成は,開示されていない。


(2) 本件特許においては,本件第1訂正及び本件第2訂正の前後を通じて,位相格子ビーム分離器が,第1の機能及び第2の機能を併せ有するための構成として,「【発明の実施の形態】」中の記載ではあるものの,例えば「【0017】該ビーム分離器は例えばガラスから成る透明プレート23を含み,み,溝21及び及び22のごとき溝の格子20が設けられている。同じく透明で例えばガラスから成るプレート25がプレート23に平行に配置され,プレート23とプレート25との間にスペースが形成され,該スペースに液晶のごとき複屈折材料24が充填されている。シール26が液晶を2つのプレート間に維持する。」(甲第2号証3頁右欄20行目〜26行目)を開示している。

  甲4公報中に,このような記載はない。


(3) 以上によれば,甲4発明のグレーティングレンズ(手段)は,第1の機能を有してないか,そのような機能を有しているか否か不明であるか,のいずれかである,という以外にない。


  そうすると,単に,甲3発明の変形偏光プリズムを,甲4発明の変形偏光プリズムを甲4発明のグレーティングレンズ(手段)に置き換えただけでは,正常に動作しないか,動作するか否か不明であるかのいずれかということになる。


  したがって,決定が,「引用例1の発明において,変形偏光プリズムに代えて,位相格子を採用することに阻害要因は認められず,引用例1の発明(判決注・甲3発明)において位相格子を採用することは容易に推考できる。」とした判断には,少なくとも理由の不備があるといわざるを得ない。


(4) 以上のとおりであるから,相違点1についての判断の誤りをいう原告の主張には理由がある。その余の点について判断するまでもなく,決定は取消を免れない。


3 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照して下さい。