●平成19(ワ)27846 損害賠償等請求事件 不正競争「営業秘密」

 本日は、『平成19(ワ)27846 損害賠償等請求事件 不正競争 民事訴訟「営業秘密」平成20年09月30日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20081001130616.pdf)について取り上げます。


 本件は、被告が第三者から購入して取得した顧客名簿が不正競争防止法2条6項の「営業秘密」に該当するので、同法2条1項4号〜6号の不正競争に該当該当することを理由に,被告らに対し損害賠償金の支払や、本件名簿の使用又は開示の禁止等を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、本件名簿の営業秘密該当性についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 平田直人、裁判官 柵木澄子)は、

1 本件名簿の営業秘密該当性について


 不正競争防止法2条6項によれば,「『営業秘密』とは,秘密として管理されている生産方法,販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,公然と知られていないもの」であり,このうちの「秘密として管理されている」といえるためには,当該情報が客観的に秘密として管理されていると認識することができる状態にあることが必要である。


 そこで,本件名簿についてこの秘密管理性の有無を検討すると,本件名簿は,もともと訴外会社において作成,管理され,これが第1売買と第2売買を経て,原告が管理するに至ったものであるから,(i)訴外会社における秘密管理性,(ii)第1売買の買主であるAにおける秘密管理性,(iii)原告における秘密管理性がそれぞれ問題となり得る。


 原告は,訴外会社における本件名簿の管理について,管理者と取扱者を特定の者に固定し,バックアップ用の情報媒体を鍵付きの引出し等に管理し,マル秘指定をして一般従業員のアクセスを制限していたなどと主張する。


 しかしながら,原告は,本件訴訟の審理において,訴外会社のもとにおける本件名簿の管理状況の手がかりとなる資料が残っていない旨を述べており,原告において,原告の上記主張を裏付ける証拠を準備することができなかったものである。


 そして,仮に,訴外会社における秘密管理性が認められたとしても,次に,第1売買の買主であるAにおける秘密管理性が問題となる。


 この点について,原告は,BとAとの間で,(i)本件名簿と本件機器が営業秘密であり,その内容を開けてはならないこと,(ii)受け皿会社(原告の前身会社)の設立準備ができ次第,譲渡すること,(iii)もしAのもとで漏洩された場合に責任を追及すること,が確認されたなどと主張する。


 しかしながら,本件名簿の第1売買の契約書には,このような営業秘密であることを前提とした条項は存在せず,同契約書は,単なる名簿とその機材の売買契約書というほかないものであって,この点は,第2売買の契約書も同様である。このほか,本件名簿がAのもとで営業秘密であることを前提として管理されていたと理解し得るような客観的な証拠はない。


 以上のとおりであるから,本件名簿については,原告のもとで,秘密管理性などの営業秘密の要件を充たしているか否かを検討するまでもなく,原告が本件名簿を取得する以前の時点において,営業秘密としての秘密管理性を充たしていたことの立証がないものというほかない。


2 結論


 したがって,原告の請求は,その余について判断するまでもなく,いずれも理由がない。


 よって,主文のとおり判決する。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。