●平成13(行ウ)274 特許権 行政訴訟 東京地裁

 今日は、昔の受験仲間と飲んできました。2件ハシゴをし、電車を乗り過ごして午前様になってしまったので、少々日記を書くのがツライですが、ここは頑張って、前にピックアップしておいた判決例である、『平成13(行ウ)274 特許権 行政訴訟 平成14年03月26日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/D451C37AD30A633A49256BE200353BE2.pdf)について取上げます。


 本件は、原告がした出願審査請求に対し,特許庁が本件請求は本件特許出願が取り下げたものとみなされた後のものであることを理由として本件却下処分を行ったことから,原告が,本件却下処分の違法を主張して,その取消しを求めた事案で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、国際出願における指定国から日本国の指定を取り下げたため,PCT条約24条(1)により,本件国際出願のうち日本における特許出願は同日取り下げたものとみなされたものの、既に本件国際出願の基礎出願である本件特許出願も取り下げられたものとみなされており,本件審査請求の対象である本件特許出願はすでに取り下げたものとみなされて存在しないから,本件請求は不適法であって,これを補正することもできず、特許法18条の2第1項による本件却下処分は適法である、という判断が支持された点で、参考になるというか、気を付けなればいけない事案かと思います。


 つまり、東京地(民事第47部 裁判長裁判官 森義之、裁判官 岡口基一、裁判官 男澤 聡子)は、


『1(1) 特許法184条の3第1項は,PCT条約11条(1)若しくは(2)(b)又は14条(2)の規定に基づく国際出願日が認められた国際出願であって,同条約4条(1)(障ノ)の指定国に日本国を含むものは,その国際出願日にされた特許出願とみなす旨規定する。


 本件国際出願は,PCT条約11条(1)に基づき平成8年6月5日を国際出願日と認められた国際出願であって(乙第2号証),同条約4条(1)(障ノ)の指定国に日本国を含むものであるから,同日にされた日本の特許法上の特許出願とみなされる。


    また、PCT条約8条(2)(b)後段は,国際出願が,いずれかの指定国において若しくはいずれかの指定国についてされた国内出願に基づく優先権の主張を伴う場合又は一の国のみの指定を含む国際出願に基づく優先権の主張を伴う場合には,当該指定国における優先権の主張の条件及び効果は,当該指定国の国内法令の定めるところによる旨規定する。


    しかるところ,上記特許出願(本件国際出願)は,本件特許出願,平成7年特許願第138081号及び平成7年特許願第148811号を基礎とする優先権の主張を伴うものである。


    したがって、上記特許出願(本件国際出願)については、上記のとおり,優先権の主張の条件及び効果を含めて、日本の特許法が適用されるから,特許法42条1項が適用され,同項ただし書に該当する事実が存しない限り,優先権の主張の基礎とされた先の出願は,その出願から1年3月を経過した時に取り下げたものとみなされる。


    弁論の全趣旨によると,本件特許出願に関して,同項ただし書に該当する事実は存しないものと認められるから,本件特許出願は,同項本文により,その出願の日である平成7年6月5日から1年3月を経過した平成8年9月5日の経過をもって取り下げたものとみなされる。


(2) 原告は,平成9年2月5日に,本件国際出願における指定国から日本国の指定を取り下げた。


    PCT条約24条(1)は,同条約11条(3)に定める国際出願の効果は,出願人が国際出願又は当該指定国の指定を取り下げた場合には,指定国において,当該指定国における国内出願の取下げの効果と同一の効果をもって消滅する旨規定する。


 したがって,原告が本件国際出願において日本国の指定を取り下げたことにより,日本における国内出願の効果は,平成9年2月5日に国内出願が取り下げられたのと同一の効果をもって消滅したものである。


  ところで,上記PCT条約24条(1)にいう「国内出願の取下げと同一の効果」に関して,原告は,国際出願における指定国の指定の取下げについては,特許法39条5項の定める遡及効を,同条1項ないし4項の場合に限定せず,すべての場合に適用すべきである旨主張する。


 しかしながら,特許法39条5項は,同一の発明等について,二つ以上の特許出願等があった場合に,最先の特許出願等が取り下げられる等した場合には,最先でない特許出願人等が特許等を受けることができるようにした規定であるから,そのような場合以外に同項が適用されるものでないことは明らかである。


 原告は,指定国の指定については先後関係が生じることは考え難いので,特許法39条1項ないし4項の場合が存在しないことになり,同条5項の意義がなくなるから,ひいてはPCT条約24条の存在意義を失うと主張するが,39条1項ないし4項の場合を,指定同士の先後関係に限定する理由はないから,例えば,日本国を指定国とした国際出願が日本国内における最先の特許出願である場合には,国際出願における日本国の指定の取下げによって,特許法39条1項,5項により,最先でない特許出願人が特許を受けることができるようになることからすると,国際出願における指定国の指定の取下げについて,特許法39条1項ないし4項の場合が存在しないということはない。


 したがって,本件国際出願における日本国の指定の取下げについては,特許法39条5項は適用されず,特許出願が初めからなかったものとみなされることはないから,前記(1)のとおり,本件国際出願における日本国の指定の取下げのときにすでに取り下げたものとみなされていた本件特許出願が,本件国際出願における日本国の指定の取下げによって,復活することはない。


(3) なお,原告は,本件国際出願について,原告が日本国の指定を取り下げた平成9年2月5日までに重複審査や重複公開がされることはないから,本件特許出願に特許法42条を適用すべき実質的理由がないと主張する。


    同法42条が,優先権の主張の基礎とされた先の出願について,その出願の日から1年3月を経過した時に取り下げたものとみなすのは,二つの出願が並存することによって生ずる競合出願を排除し,重複審査や重複公開を回避するためであり,優先期間としての1年に,見直し期間としての3月を加え,後の出願の出願公開の時期が先の出願の日から1年6月経過後であることも考慮して,1年3月の期間を出願人に与えたものということができる。


 PCT条約23条により,優先日から20か月を経過する前に,国際出願の処理又は審査が行われないからといって,20か月以内に指定を取り下げた場合に特許法42条を適用しないとするならば,出願人に上記優先期間及び見直し期間として20か月の期間を与えたのと同様の結果に帰することになり,国際出願についてのみ,明文の規定なく,このような別異の扱いをする理由はないから,原告の主張は採用できない。


    かえって,本件においては,原告にも他の出願人と等しく,同法42条の定める1年3月の期間が与えられていたのであり,その期間内に日本国の指定の取下げ,本件国際出願の取下げ,本件特許出願の優先権主張の取下げ等をすることによって,本件特許出願について取り下げたものとみなされないようにすることが可能であったのであるから,本件にのみ同法42条の適用を排除する実質的な理由もない。


(4) したがって,本件請求がされた平成11年1月26日には,本件請求の対象である本件特許出願はすでに取り下げたものとみなされて存在しないから,本件請求は不適法な手続であって,これを補正する余地もない。


2 以上のとおり,本件却下処分に違法な点は認められない。

 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。