●平成13(行ウ)385 特許権 行政訴訟 平成14年04月24日 東京地裁

 本日は、『平成13(行ウ)385 特許権 行政訴訟 平成14年04月24日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/B3414E8AB176D39549256BF8002017D8.pdf)について取り上げます。


 本件は、4年目以降の特許料納付期間後の特許料の納付に際し、特許料のみを納付し、割増特許料を納付しない場合に、本件補充納付書による納付手続は,特許権回復期間を経過した後に納付されたものであるから,不適法であって補正することができないとして特許庁が出した却下処分の取消しを求め、その訴えが却下された事案です。


 つまり、東京地裁(民事第29部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 佐野信、裁判官 谷有恒)は、


『1 法108条2項は,第4年以降の各年分の特許料を前年以前に納付すべきことを定めている。また,法112条は,特許権者は,納付期限が経過した後であつても,特許料納付期限経過後6か月以内であれば,特許料及びこれと同額の割増特許料を追納することができ,特許料追納期間内に特許料及び割増特許料の納付がない場合に,その特許権は,納付期限の経過の時にさかのぼつて消滅したものとみなす旨を定めている。


 さらに,法112条の2第1項は,特許料追納期間内に追納がなく,特許権が消滅したものとみなされる場合であっても,(i)特許料追納期間内に追納できなかったことが原特許権者の責めに帰することができない理由によること,及び,(ii)追納できない理由が解消されてから14日(在外者にあっては2か月)以内で,特許料追納期間の経過後6か月以内に,原特許権者が特許料及び割増特許料を追納したことの両要件が充たされた場合に,原特許権者において,特許料及び割増特許料を追納することができる旨規定する。


2 争いない事実及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおりの事実が認められる。

ア 本件特許権については,第4年分の特許料について,特許料納付期限内に特許料の納付がされなかった。また,特許料追納期間の経過する平成11年4月4日までに特許料及び割増特許料の追納がなかった。本件特許権は,特許料納付期限である平成10年10月4日を経過した時にさかのぼって消滅したものとみなされる。


 さらに,原告は,法112条の2第1項が規定する特許権回復期間の経過する平成11年10月4日までに第4年分の特許料及び割増特許料の納付をしていない。


 そうすると,本件特許権については,特許権回復期間内に所定の特許料及び割増特許料が納付されなかったので,本件特許権の消滅については回復の余地はない。


イ 原告は,平成11年9月28日,本件納付書により,第4年の特許料の名目で3万0300円のみを納付手続をした。原告のした本件納付書による納付手続は,特許権消滅後の納付であるにもかかわらず,特許料のみの納付であるから不適法であって補正の余地はない。


ウ また,原告は,特許権回復期間を経過した同年11月16日に,特許権回復の手続である旨の弁明書と共に,本件補充納付書により,3万0300円の割増特許料の納付手続をした(本件補充納付書の提出日の欄には同年9月28日と記載されているが,乙5及び6によれば,本件補充納付書の作成日付は前記のとおり同年11月16日である。)。


 原告のした本件補充納付書による納付手続は,特許権回復期間を経過した後に納付されたものであるから,不適法であって補正することができない。


3 そうすると,法18条の2第1項に基づき,被告が平成12年4月17日に本件納付書及び本件補充納付書を却下した本件各却下処分に違法はない。


 これに対して,原告は,原告のした本件補充納付書による補充納付手続は,法112条の2の要件を充足した適法な手続である旨主張する。


 しかし,法112条の2が適用されるためには,前記のとおり,(i)特許料追納期間内に追納できなかったことが原特許権者の責めに帰することができない理由によること,及び,(ii)追納できない理由が解消されてから14日(在外者にあっては2か月)以内で,特許料追納期間の経過後6か月以内に,原特許権者が特許料及び割増特許料を追納したことの両要件が充たされた場合であることが必要であるところ,本件補充納付書による補充納付手続は,特許権回復期間を経過した後の平成11年11月16日であるから,上記(ii)の要件を充足せず,不適法な手続である。


 念のため付言する。特許権者が,代理人によって特許に関する手続をする場合,法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」の有無については,代理人の事情をも考慮して判断すべきであるのは当然である。本件において,特許料追納期間の経過は,弁理士である代理人が特許料納付期限又は特許料追納期間を誤認したことによって生じたのであるから,特許権者の責めに帰することができない理由があると判断することはできない。


4 結語

 以上のとおりであり,本件特許権については,特許料追納期間が経過し,さらに特許権回復期間内に所定の特許料及び割増特許料が納付されなかったので,本件特許権は確定的に消滅している。本件特許権が確定的に消滅している以上,たとえ本件各却下処分を取り消したとしても,本件特許権が回復される余地はないから,本件訴えは訴えの利益を欠く。主文のとおり判断する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。