●平成20(行ケ)10156審決取消請求事件 商標権「生鮮市場ばんばん」

 本日は、『平成20(行ケ)10156 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「生鮮市場ばんばん」平成20年08月04日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080805094651.pdf)について取上げます。


 本件は、商標法4条1項11号を理由とする拒絶審決の取消しを求め、その請求が認容された事案です。


 本件では、取消事由1における、拒絶審決時に商標法4条1項11号の引用登録商標の存続期間が満了していた場合の判断の点で参考になります。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 今井弘晃、裁判官 清水知恵子)は、


『1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。


2 取消事由1について

(1) 商標法4条1項11号は,「当該商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標又はこれに類似する商標であつて,その商標登録に係る指定商品…について使用をするもの」については,商標登録を受けることができないと規定している。


 したがって,審決が本願商標について商標法4条1項11号に該当すると判断することができるためには,引用商標が「他人の登録商標」であること,すなわち,引用商標に係る商標権が審決時に有効に存続するものであることが必要である。


(2) ところが引用商標は,平成9年6月27日に商標登録第2722262号として登録され,この日から10年後(商標法19条1項)である平成19年6月27日をもって存続期間が満了し,平成20年3月26日に商標権抹消の登録がなされたことが認められる(当事者間に争いがない。甲12)。


(3) したがって,引用商標に係る商標権は,審決時(平成20年3月19日)において既に消滅していたものであるから,審決がこれを引用商標として商標法4条1項11号に該当するとしたことは誤りである。


3 結語

 よって,その余について判断するまでもなく,原告の請求は理由があるから認容して,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


  なお、特許庁は、取消事由1について、

『審決時(平成20年3月19日)において引用商標に係る商標権が存在していなかったことは認める。


ア 商標権の存続期間の更新登録の申請は,その存続期間の満了前6月から満了の日までの間(第1申請期間)にしなければならないが,商標権者は,第1申請期間内に更新登録の申請をすることができないときは,その期間が経過した後であっても,その期間の経過後6月以内(第2申請期間)にその申請をすることができる(商標法20条2項及び3項)。


 そして,商標権者が第2申請期間内に更新登録の申請をしないときは,その商標権は,存続期間の満了の時にさかのぼって消滅したものとみなされる(商標法20条4項)。


イ 引用商標は,第1申請期間はもとより,第2申請期間内(平成19年12月27日まで)にも更新登録の申請がなされなかったため,その商標権は,存続期間の満了の時(平成19年6月27日)にさかのぼって消滅したものとみなされ,審決日(平成20年3月19日)後の平成20年3月26日付けで,その登録が抹消された。

ウ したがって,審決時(平成20年3月19日)において引用商標に係る商標権は存在していなかったこととなるので,この点に係る事実は認める。 』

 と反論されています。


 従って、本件の場合、審決日(平成20年3月19日)の方が、存続期間満了日(平成19年6月27日)、さらには存続期間満了後の第2申請期間内(平成19年12月27日まで)より後ですので、登録抹消日(平成20年3月26日)まで待っても審決を出しても良かったのでは、と思います。


詳細は、本判決文を参照してください。