●平成11(ワ)2311 特許権等侵害差止等請求事件「多目的ロースター」

 本日も、『平成11(ワ)2311 特許権等侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「多目的ロースター」平成14年07月18日 名古屋地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/E2D1FEF72B04D18A49256C4400256D4F.pdf)について取り上げます。


 本件では、意匠の類似の判断も、参考になるかと思います。


 つまり、名古屋地裁(民事第9部 裁判長裁判官 加藤幸雄、裁判官 舟橋恭子、裁判官 富岡貴美)は、


7 争点(4)(本件プレートチ,チ2が,丁意匠と類似しているか。)について


(1) 意匠とは,物品の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって視覚を通じて美感を起こさせるものをいい(意匠法2条),その類否の判断は,要部の共通性の有無を基準とすべきである。


 すなわち,全体的に観察して,看者の注意を最も強く引く部分(要部)が共通するときには,その余の部分に相違があっても,全体として類似するといい得るが,要部が相違すると,細部について共通点があったとしても類似には当たらないと解される。


(2) そこで丁意匠について検討するに,証拠(甲5)によれば,丁意匠公報には,意匠に係る物品はロースターのプレート(ロースター用テーブルの部材であって,ロースターのテーブルと,その中央部に設けられる焼肉料理部との間の空間部に被せられる枠状のカバー部材)であって,本件プレートチ,チ2と共通していることが,認められる。


(3) 次に,丁意匠と本件プレートチ,チ2を対比すると,その形態上の共通点は,(i)周壁の形状を扁平円筒形としている点,(ii)周壁の上方に多数の吸引孔を規則的に配列貫設している点,(iii)周壁より外方に突出した鍔部の先端が垂直に垂れ下がっている点にあり,他方,相違点としては,(i)吸引孔の形態について,丁意匠は円形状であるのに対し,本件プレートチチ2は,上辺をわずかに膨出する円弧状とし,下辺と左右両辺を直線とした略縦長長方形状である点,(ii)鍔部の形態について,丁意匠は,周壁部上端周縁から外方に直角に曲げて水平面を形成し,その先端を直角に垂直面を形成し垂下しているのに対し,本件プレートチチ2は,周壁部上端周縁から丸みを介して外方にごくわずかな幅の水平面を形成し,それになだらかに続けて,幅が水平面幅の略3倍で,鍔部全体高の略半分の高さまで湾曲状に下降する斜面を形成し,その先端には,丸みを介して垂直面を形成し垂下している点が挙げられる。


 しかしながら,証拠(乙17,18)によれば,両者の共通点(i)ないし(iii)のいずれも丁意匠の出願前において既に見られる形態であることが認められるから,格別特徴のあるものではなく,特に看者の注意を引くとはいえない。


 次に,相違点について検討するに,相違点(i)は,周壁部の内面側の吸引孔の形状に関する相違点であり,丁意匠が円形状であるのに対し,本件プレートチ,チ2は上辺をわずかに膨出する円弧状にして下辺と左右両辺を直線とした略縦長長方形状を呈しているから,その印象が大きく異なるといえる。


また,相違点(ii)は,鍔部の形態に関する相違点であるところ,丁意匠は,周壁部上端周縁から上方に直角に曲げて水平面を形成し,その先端を直角に垂直面を形成し垂下しているため,全体としては平面的な印象を与えるのに対し,本件プレートチ,チ2は,周壁部上端周縁から丸みを介して外方にごくわずかな幅の水平面を形成し,それになだらかに続けて,幅が水平面幅の略3倍で,鍔部全体高の略半分の高さまで湾曲状に下降する斜面を形成し,かつその先端には,丸みを介して垂直面を形成し垂下しているため,全体としては丸みを帯びた印象を与える点で大きく異なっている。


 そして,いずれも,使用時においては,看者から唯一観察可能な部分であることを考慮すると,これらの部分が形態上の要部であると解されるところ,これらの相違点は,類比の判断に大きな影響を及ぼすというべきである。


 そうすると,上記のとおりの共通点があることを考慮しても,全体的に観察して,類似するものとはいえないと判断するのが相当である(本件プレートチ,チ2は,被告意匠権の実施品であるところ,乙24によれば,原告がその登録を無効とする審決を求めた審判において,特許庁もほぼ同様の理由で請求を排斥する審決をしたことが認められるが,この事実も上記判断の正当性を裏付けるものといえる。)。


8 まとめ


 以上によれば,その余について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。