●平成11(ワ)2311 特許権等侵害差止等請求事件「多目的ロースター」

 本日も、『平成11(ワ)2311 特許権等侵害差止等請求事件 特許権 民事訴訟「多目的ロースター」平成14年07月18日 名古屋地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/E2D1FEF72B04D18A49256C4400256D4F.pdf)について取り上げます。


 本件では、本件特許発明における構成要件Iの「輪切り切断形状面」の判断も、参考になるかと思います。


 つまり、名古屋地裁(民事第9部 裁判長裁判官 加藤幸雄、裁判官 舟橋恭子、裁判官 富岡貴美)は、


5 争点(3)ア(本件装置ヘ,へ2のセラミック炭の上方向の形状が構成要件Iの「輪切り切断形状面」を充足するか。)について


 丙明細書によれば,丙考案は,バーナー加熱のロストルによるロースターは焼きむらと焼き上がりに欠点を有し,他方,木炭による場合は焼き上がりまでに時間を要するという欠点を有していたのを,前記前提事実等のとおり,AないしKの各要件を構成することにより,セラミック炭を使ったロースターによって木炭に近い状態の焼き上がりを得ると共に,木炭の視覚的な食欲,高級感を励起せしめ,また立ち上がり及び焼き上がりに要する時間の短縮を図ろうとしたものと認められる。


 ところで,セラミック(炭)を加熱し,その放射熱によって加熱調理することは,特開昭62−228234(乙9の審判請求書に添付の甲1)によって示されており,実開昭62−130535(同添付の甲2)の実用新案登録の範囲,実施例及び図面には,構成要件AないしFについての記載があることが認められる。


 また,特開昭64−11520(同添付の甲4)の第1,2図には,上下方向に孔を穿設した多数のセラミック炭を輪切り切断形状面を上下方向面として設置する構成が示されていることが認められる。


 そうすると,丙考案は,上記とは別の観点からセラミック炭をいかに木炭らしく見せるかの課題に対し,具体的にG,H,Iの各要件を構成したところに特徴を有すると判断できる。


 この特徴は,技術思想的なものというより,むしろ視覚に訴える意匠的なものというべきであるから,その全体が1つにまとまった具体的構成に意義があり,その中から抽象的な技術思想を抽出することは困難であり,したがって,その構成要件を解釈するに当たっては,できるだけ文言に忠実に行う必要があるところ,構成要件?のうち,「輪切り」とは,一般に「円筒形の物を,切り口が輪になるように横に切ること」を意味し,「切断面」とは,「切断した切り口の面」を意味することからすると,「輪切り切断形状面」とは,ある部材を輪切りに切断したときに現れる切断形状をもった平面を意味すると解するのが相当である。


 しかるところ,証拠(甲27の1ないし6,29の2の1ないし4,29の3の1ないし4)によれば,本件装置ヘ,へ2 のセラミック炭の形状は,いずれも上部中央が盛り上がった形状(逆お椀形)であって,平面でないことが認められる。したがって,本件装置ヘ,へ2のセラミック炭の上方向の形状が,丙考案の構成要件?の「輪切り切断形状面」に該当しないことは明らかというべきである。


 6 争点(3)ウ(構成要件?の「輪切り切断形状面」と均等か。)について

 発明,考案の本質的部分とは,公知技術では実現できなかった作用効果を生じさせる技術思想の中核を成す部分であるところ,なるほど,上記逆お椀形のセラミック炭も,視覚的には木炭様の印象を与えることは否定できないものの,前記のとおり,丙考案の構成要件のうち,そのAないしF及びJは,公知技術に存し,本件考案丙の特徴は,構成要件G,H,Iの組合せから成る全体構成にあると解されるから,構成要件?のセラミック炭の形状が「輪切り切断形状面」からなることが丙考案の本質的部分を構成することは明らかである。そうすると,均等論を適用する余地はなく,本件装置ヘ,へ2が本件考案の技術的範囲に含まれるとはいえない。


 したがって,その余について判断するまでもなく,丙考案に基づく請求は認められない。』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。