●平成20(ネ)10018 商標使用権抹消登録・反訴請求控訴事件

 本日は、『平成20(ネ)10018 商標使用権抹消登録・反訴請求控訴事件 商標権 民事訴訟 平成20年07月23日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080728094742.pdf)について取上げます。


 本件は、商標使用権抹消登録・反訴請求の控訴事件で、本件控訴が棄却された事案です。

 本件では、まず、本件控訴人代表者が本件契約を締結する際に契約の相手方を誤認していたのであり、この控訴人代表者の誤認は,法律行為の要素の錯誤であるから,本件契約は民法95条により無効であるとする控訴人の錯誤無効の主張についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、


2 錯誤無効の主張について

(1) 原判決18頁12行〜23行を,次の(2)のとおり改める。

(2) 「ア控訴人の主張は,Bから紹介された相手方と思って被控訴人と本件契約を締結したが,被控訴人は,Bから紹介された相手方でなかったから錯誤があるというものである。


 しかし,原判決14頁15行〜18頁10行の認定事実によると,控訴人は,被控訴人を本件契約の当事者と認識し,被控訴人と契約を締結する意思で本件契約を締結したことは明らかであるから,契約の相手方自体には錯誤はない。


 控訴人の主張は,その相手方がBから紹介された者であるかどうかという点に錯誤があったというものであるところ,このような錯誤は,契約を締結するに至った動機に関する錯誤にすぎないものである。意思表示の動機は,表意者が当該意思表示の内容として契約の相手方に表示した場合でない限り,法律行為の要素とはならない(最高裁昭和29年11月26日第二小法廷判決・民集8巻11号2087頁)ところ,相手方である被控訴人に,本件契約締結までに,本件契約の相手方がBから紹介された者であるかどうかという点が表示されたことはない(原判決16頁8行〜10行)から,これが法律行為の要素の錯誤となるとは認められず,本件契約が無効になることはない。


イ 控訴人は,専用使用権は,物権的な権利であり,排他性を有しているものであって,いったん設定した後は,その範囲内においては,商標権者ですらその登録商標を使用することができなくなるものであり,加えて,商標法53条により,商標権者には使用権者による登録商標の使用を監督する義務が課されているから,控訴人が本件契約によって商標権の専用使用権を設定したということは,上記のような登録商標の使用についての重大な制約と,使用権者に対する厳格な監督義務を自らに課すということを意味する,と主張し,この主張に基づいて,Bから紹介された相手方と思って被控訴人と本件契約を締結したが,被控訴人は,Bから紹介された相手方でなかったことは,要素の錯誤に該当すると主張するが,専用使用権の内容やそれに伴う商標権者の義務が控訴人が主張するようなものであることは,上記アの認定を左右するものではない。


ウ したがって,控訴人の錯誤の主張は理由がない。」』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸;<気になった記事>

●『音や動きも商標に=特許庁が検討開始』http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2008072800696
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