●平成19(ワ)19275 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟(1)

 本日は、『平成19(ワ)19275 損害賠償等請求事件 著作権 民事訴訟「商品形態の模倣」平成20年07月04日 東京地方裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080711092534.pdf)について取上げます。


 本件は、被告商品が原告商品の形態を模倣したもので,不正競争防止法2条1項3号に該当すると主張して,原告らが,被告に対し,不正競争行為に基づく損害賠償及び謝罪広告を請求し,また,被告が,原告ベストエバーが著作権を有する原告商品の形態を模倣した被告商品を原告らに無断で販売,譲渡する行為は,原告ベストエバーの著作権及び原告商品の日本国内における販売等につき独占的な権利を有している原告ベストエバージャパンの利用許諾権を侵害する不法行為に当たると主張して,原告らが,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償を請求し、棄却された事案です。


 本件では、まず、「準拠法」と、争点(1)の「(被告商品は原告商品の形態を模倣したものか)について」との判断とが参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第47部 裁判長裁判官 阿部正幸、裁判官 平田直人、裁判官 瀬田浩久)は、


1 準拠法について


 本件は,原告ベストエバーが大韓民国において設立された法人であるという点で渉外的要素を含むものであるから,同原告との関係で準拠法を決定する必要がある。


 不正競争行為及び著作権侵害に基づく損害賠償請求の準拠法に関しては,法の適用に関する通則法等に直接の定めがないため,条理により決するのが相当である。


 上記法律関係の性質は不法行為であるから,法の適用に関する通則法の施行期日(平成19年1月1日)後の行為については,同法17条により,また,同法の施行期日前の行為については,法例11条1項(法の適用に関する通則法附則3条4項により,なお従前の例によるとして,法例の規定が適用される。)により,準拠法を決すべきであり,本件の損害賠償請求については,原告らに対する権利侵害という結果が生じたと主張される我が国の法である民法709条が適用される。


 また,不正競争防止法に基づく謝罪広告の請求に関しても,法の適用に関する通則法等に直接の定めがないため,条理により決するのが相当である。本件では,謝罪広告の請求の対象とされた行為が日本国内で行われ,営業上の利益の侵害も日本国内で生じたというのであるから,我が国の不正競争防止法が最も密接な関係を有する地の法として準拠法になると解される。


3 争点(1)(被告商品は原告商品の形態を模倣したものか)について

(1) 上記2(2)及び(4)で認定した原告商品の形態と被告商品の形態とを比較すると,両者は,頭顔部が縦に長い楕円形,胴体部が円筒状をしており,胴体部の背面側の上端で頭顔部が連結されていること,胴体部の上端に円を囲む形で腕があり,上端の正面で腕の先端を合わせていること,頭部や耳を覆う毛の材質と顔面部を覆う毛の材質が異なっていること,黒い糸で手足の指を形成していること,目,鼻,耳,足及び尾の形状や取付位置等の各点において共通している。


 そうすると,原告商品と被告商品は,個々の特徴的形状の多くが共通しており,全体の形態もほぼ同一であるということができるので,両者の形態は実質的に同一であるというべきである。


 被告は,被告商品では口や手足の指を表現するものとして黒い糸が縫い付けられ,また,耳元にリボンが付けられているのに対し,原告商品ではこれらが存在しない点,頭と顔全体のバランスが異なる点,原告商品の底面のマジックテープが被告商品には付けられていない点において,原告商品と被告商品の形状に相違がみられると主張する。


 しかしながら,手足の指を表現するものとして黒い糸が縫い付けられている点は,上記2(2)のC3及びC7,同(4)のc3及びc7のとおり,両商品に共通している形状であると認められる。また,その余の点は,両商品の相違点であるということができるものの,いずれも些細なものであって,商品の全体的形態に影響を与えるものではないということができ,両者の形態が実質的に同一であると判断することの妨げとなるものではない。被告の上記主張は,採用することができない。


(2) そして,上記(1)で説示したとおり,原告商品及び被告商品の個々の特徴的形状の多くが共通しており,両者の形態は実質的に同一であるということができること,原告商品,被告商品ともに動物のぬいぐるみに小物入れを組み合わせた商品である点で共通していること,上記2(3)イのとおり,被告商品の販売が開始されたのは平成18年4月ころであり,原告ベストエバージャパンが自社のウェブページに原告商品の写真を掲載した平成18年1月22日と近接した時期であること等の事情を考慮すると,被告商品は,原告商品を模倣して製造されたものと推認することができる。


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。