●平成19(ワ)20986 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟

 本日は、『平成19(ワ)20986 損害賠償請求事件 その他 民事訴訟』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080711110045.pdf)について取上げます。


 本件は、「ピンク・レディー」を構成していた原告らの写真を無断で使用した記事を女性週刊誌に掲載した被告に対し、不法行為(パブリシティ権侵害。民法715条)に基づいて損害賠償金等の支払を求め、その請求が棄却された事案です。


 本件では、芸能人等のパブリシティ権侵害の判断が参考になるかと思います。


 つまり、東京地裁(民事第40部 裁判長裁判官 市川正巳、裁判官 中村恭、裁判官 宮崎雅子)は、


1 争点(1)(パブリシティ権侵害の有無)について

(1) パブリシティ権について

ア 人は,著名人であるか否かにかかわらず,人格権の一部として,自己の氏名,肖像を他人に冒用されない権利を有する。人の氏名や肖像は,商品の販売において有益な効果,すなわち顧客吸引力を有し,財産的価値を有することがある。このことは,芸能人等の著名人の場合に顕著である。この財産的価値を冒用されない権利は,パブリシティ権と呼ばれることがある。


 他方,芸能人等の仕事を選択した者は,芸能人等としての活動やそれに関連する事項が大衆の正当な関心事となり,雑誌,新聞,テレビ等のマスメディアによって批判,論評,紹介等の対象となることや,そのような紹介記事等の一部として自らの写真が掲載されること自体は容認せざるを得ない立場にある。そして,そのような紹介記事等に,必然的に当該芸能人等の顧客吸引力が反映することがあるが,それらの影響を紹介記事等から遮断することは困難であることがある。


 以上の点を考慮すると,芸能人等の氏名,肖像の使用行為がそのパブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは,その使用行為の目的,方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して,その使用行為が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって判断すべきである。


イ なお,原告らも被告も,通常モデル料が支払われるべき週刊誌等におけるグラビア写真としての利用と同視できる程度のものか否かの基準に言及するが,この基準ないし説明は,東京地裁平成16年7月14日判決(判例タイムズ1180号232頁〔ブブカアイドル第一次事件)の事実関係の下では適切なものである〕としても,他の事実関係の事件にそのまま適用することができるものではないことに注意を要する。


(2) 本件写真1ないし7について

 本件雑誌及びその表紙の態様(前提事実(2) ,本件記事及び本件写真の掲載態)様(前提事実(3) ,本件記事掲載の経緯(前提事実(4))及び本件雑誌の宣伝広告)状況(前提事実(5))によれば,(i)ピンク・レディーが歌唱し演じた楽曲の振り付けを利用してダイエットを行うという女性雑誌中の記事において,その振り付けの説明の一部又は読者に振り付け等を思い出させる一助として,本件写真1ないし5及び7を使用し,さらに,ダイエットの目標を実感させるために,本件写真6を使用したものであり,(ii)使用の程度は,1楽曲につき1枚のさほど大きくはない白黒写真であり,(iii)Cの実演写真,Cのひとことアドバイス,4コマの図解解説など振り付けを実質的に説明する部分が各楽曲の説明の約3分の2を占め,本件写真2ないし5及び7は,各楽曲についての誌面の3分の1程度にとどまり,(iv)その宣伝広告や表紙の見出しや目次においても,殊更原告らの肖像を強調しているものではない。


 したがって,本件写真1ないし7の使用により,必然的に原告らの顧客吸引力が本件記事に反映することがあったとしても,それらの使用が原告らの顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的としたものと認めることはできない。


(3) 本件写真8ないし14について


 本件雑誌及びその表紙の態様(前提事実(2) ,本件記事及び本件写真の掲載態)様(前提事実(3) ,本件記事掲載の経緯(前提事実(4))及び本件雑誌の宣伝広告)状況(前提事実(5))によれば,(i)本件写真8ないし14を使用した記事は,ピンク・レディーが歌唱し演じた楽曲の振り付けを利用してダイエットを行うという記事に付随して,現在も芸能活動を続ける原告らの過去の芸能活動を紹介する記事であり,(ii)誌面1頁の約3分の1の中に,原告らが撮影されたさほど大きくはない白黒写真7枚を掲載し,(iii)その宣伝広告や表紙の見出し及び目次においても,殊更原告らの肖像を強調しているものではない。


 したがって,本件写真8ないし14の使用により,必然的に原告らの顧客吸引力が本件記事に反映することがあったとしても,それらの使用が原告らの顧客吸引力に着目し,専らその利用を目的としたものと認めることはできない。


2 結論

 よって,原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『アースがフマキラー提訴 虫除け器で特許権「侵害」』http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080714/trl0807141746012-n1.htm
●『「携帯型虫よけ器で特許侵害」=アース製薬フマキラー提訴−東京地裁http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008071400623
●『コナミ、米メディア大手バイアコム音楽ゲームの特許侵害で提訴』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3962