●早稲田大学のRCLIPの第4回を受講しました。

 昨日は、早稲田大学のRCLIPの『知的財産紛争−事後処理から予防と戦略へ−』の第4回、「知的財産紛争の一回的な解決方策を探る」を受講してきました。


 講師は、知財高裁第3部の飯村敏明判事です。講義時間が1時間半と短く、また学生など実務家以外の方が聴講していることも考慮されたせいか、なるべく専門的な用語等を避けられたようで、日本におけるパテント政策の変化や、進歩性の判断手法や、特許法104条の3の与えた影響、紛争解決機能を解決するための立法論等の話で終わってしまい、もう少しつっこんだ内容があっても良かったではと思いました。


 特に、レジュメには、特許法104条の3後の侵害訴訟で、リパーゼ最高裁をどう読むのか?、出願経過の参酌は?、均等論はどうなったのか?等の論点があがっており、これらの論点はとても興味のあるところで、ぜひとも飯村判事の意見等を聞きたかったのですが、これらについては割愛され、少々残念でした。


 でも、予測可能性の話や、権利者と第三者との公平性を確保するため効果や実験の後だしは認めない等の説明は、とても納得のいくものであり、なんとなく知財高裁における判断基準の断片が分かったような気もして、とても参考になりました。


 なお、特許法104条の3とリパーゼ最高裁との関係ですが、個人的には、リパーゼ最高裁は、特許法第29条1項及び2項などの特許権発生前の特許要件を判断する際の「出願に係る発明の要旨」の認定について判示した判決であるので、特許権発生後の侵害訴訟における「特許発明の技術的範囲」の解釈や、特許権発生後の特許無効審判における「特許発明の要旨」の認定とは別である、と思っています。


 つまり、特許権発生後の特許無効審判における「特許発明の要旨」の認定において、侵害訴訟における「特許発明の技術的範囲」と同様に、特許法70条2項を原則的に適用しても、特許権発生前の特許要件を判断する際の「出願に係る発明の要旨」の認定について判示したリパーゼ最高裁に反することにはならないものと思います。


 従って、個人的には、特許法104条の3および特許無効審判における審理では、リパーゼ最高裁判決は適用されず、侵害訴訟における「特許発明の技術的範囲」と同様に、特許法70条2項を原則的に適用して判断するで良いのでは、と考えています。