●平成20(行ケ)10025審決取消請求事件 商標権「BonTerraボンテラ」

 本日は、『平成20(行ケ)10025 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「BonTerra ボンテラ」平成20年06月26日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080626160032.pdf)について取上げます。


 本件は、不使用商標の取消審判の認容審決の取消しを求めた審決取消し訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、まず、取消事由1の、被告が原告の関連会社であったボンテラアメリカの総輸入元(総代理店)として本件商標を使用していたものの、通常使用権者の使用として認めらなかった点や、本県登録商標の使用の証拠として提出したカタログでは本件予告登録前3年以内の使用は認められないと判断した点等で、参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第3部 裁判長裁判官 飯村敏明、裁判官 齊木教朗、裁判官 嶋末和秀)は、


『 当裁判所は,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標の通常使用権者及び商標権者が本件商標の使用をしていたとは認められず,また,被告による本件審判請求が権利の濫用ということもできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。


1 取消事由1(本件商標の使用の事実に関する認定の誤り)について

(1) ウエスコットによる本件商標の使用について

 原告は,ウエスコットが,本件商標の通常使用権者であることを前提として,ウエスコットが,本件商品カタログ(甲1),ウエスコットのインターネット上のウェッブサイト(甲3参照),国土交通省が管理する新技術情報提供システム(NETIS)に登録された技術名称「ボンテラ」の掲載ページ(乙5)において,本件商標を使用したと主張する。


 しかし,以下のとおり,(i)ウエスコットは,本件商標の通常使用権者であるとは認められず,また,(ii)ウエスコットが,本件予告登録前3年以内に日本国内において,原告主張に係る本件商標を使用した事実も認められない。したがって,原告の上記主張は失当である。


ア ウエスコットが本件商標の通常使用権者に当たるかについて

 ウエスコットが本件商標の通常使用権者であったか否かについて,以下のとおり判断する。


(ア) 事実認定

 下記証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。


a ウエスコットは,遅くとも平成7年ころから,原告の関連会社であったボンテラアメリカの総輸入元(総代理店)として,本件商標や,「BonTerra」の文字,「ボンテラ」の文字などを用い,本件商標の指定商品に該当するボンテラアメリカから輸入した浸食防止用マットに関する事業活動(販売,販促活動,商品説明を含む)を日本国内において開始した。同年3月ころには,本件商標の登録出願の審査に供するため,ウエスコットが作成した本件商品カタログと同一のカタログが特許庁に提出されたことがあった(甲1,8)。


b ボンテラアメリカは,平成8年(1996年)1月24日,ウエスコットに対し,(i)ウエスコットが日本におけるボンテラアメリカの独占的販売代理店であること,(ii)パンフレット及び広告材料を開発し,ウエスコット自身の関連商品を含むすべての種類の浸食防止商品を日本において販売するために,ウエスコットが「BonTerraロゴ及び商標名」を使用することを許諾すること,(iii)「BonTerraロゴ及び商標名」は,原告の登録商標であるが,ボンテラアメリカが日本における独占的使用権者となっていることなどを内容とする通知を発したことがある(甲5)。しかし,ボンテラアメリカは,平成11年(1999年)に,買収されて消滅した。


c 原告は,ボンテラアメリカがウエスコットに「BonTerraロゴ及び商標名」の使用を許諾したことについて,追認した事実はなく,かえって平成17年(2005年)4月18日ウエスコットに対し,ウエスコットが,原告の許諾なく,「BonTerra商標」を使用していることを指摘し,「BonTerra商標」の使用の停止を求める趣旨の警告書を発した(乙2)。また,原告は,代理人を通して,平成19年5月28日,ウエスコットの代理店であるパンテックコーポレーションに対しても,本件商標に係る商標権を侵害する可能性がある旨を通知した(乙3)。


(イ) 判断


 上記事実によれば,(i)原告が,ウエスコットに対し,本件商標の通常使用権を許諾したこと,(ii)ボンテラアメリカが,平成8年当時,本件商標の通常使用権を許諾する権原を有していたこと,(iii)原告が,ボンテラアメリカのウエスコットに対する許諾を追認したことのいずれの事実も認めることはできない。


 かえって,原告がウエスコットに対して,「BonTerra商標」の使用権限を否定し,その使用の差止めを求めている事実に照らすならば,ウエスコットが本件商標の通常使用権者でなかったと認定すべきである。


 確かに,被告が,本件審判手続において,「日本国内においては,従来から現在に至るまで,株式会社ウエスコットが総代理店として,本件商標を使用してきた」と主張した経緯はあるが(甲8)が,同主張は,単に総代理店として営業を行った被告の認識を述べたにすぎないのであって,前記認定及び判断を左右するに足りるものとはいえない。


 したがって,ウエスコットが,本件予告登録前3年以内に,本件商標の通常使用権者であったということはできない。


イ ウエスコットの本件商標の使用の事実について


 ウエスコットは,本件商標の通常使用権者ではないが,以下のとおり,同社が,本件予告登録前3年以内に日本国内において,原告主張に係る経緯で本件商標を使用した事実も認められない。


(ア) 本件商品カタログについて

a 本件商品カタログには,その発行日を示す記載は見当たらないが,同カタログは,平成7年に特許庁に提出された商品カタログと同じものであり(甲8,弁論の全趣旨),その最終ページの右下には,「総輸入元」,「株式会社ウエスコット」,「東京都中野区中野3−36−10中野ヒルサイドビル4階〒164」との記載があること(甲1)に照らせば,同カタログは,郵便番号が7桁化された平成10年2月より前に作成されたものと認められ,また,ウエスコットの所在地は,遅くとも平成17年4月18日以前に,本件商品カタログの記載とは異なるものとなっていたことが認められる(乙2)。


 そして,本件全証拠によるも,本件商品カタログが,本件予告登録(平成19年2月14日)前3年以内に,使用されていたとの事実は認められない。


b この点に対し,原告は,本件商標の指定商品は,長年にわたり,特段の変更を加えることなく継続的に販売し,使用することができる特性を有するから,一度作成した商品カタログも,長年にわたりそのまま継続して使用することができるところ,本件商品カタログは,平成7年3月ころ,特許庁に提出され,また,ヘイレックス・ジャパンから取り寄せることができたことからすると,本件商標の指定商品の販売,販促活動,商品説明等が,本件商品カタログを用いることにより,継続的にされていたと推認されるべきである旨主張する。


 しかし,ウエスコットによる平成11年以降の本件商標の指定商品に係る施工実績件数は,国土交通省関連のものが512件,その他の公共機関関連のものが784件に達し(乙5),その取引件数は少なくないにもかかわらず,10年近くにわたって同一のカタログを使用し続けることは不自然であり,また,郵便番号の7桁化や所在地の移転があった場合に,作り直すこともせずにカタログを使用し続けることは考えられないこと等の事実に照らすならば,本件商品カタログが,本件予告登録前3年以内に,使用されていたとは認められない。原告の主張は採用することできない。


(イ)ウェッブサイトのプリントアウトについて


 ウエスコットのウェッブサイトのプリントアウト(甲3)及び国土交通省が管理する新技術情報提供システム(NETIS)に登録された技術名称欄に「ボンテラ」との記載のある掲載ページ(乙5)の内容を検討しても,本件商標又はこれと社会通念上同一の商標が表示されているとは認められない。


 また,甲3は平成19年5月9日に,乙5は平成20年2月7日に,それぞれプリントアウトされたものと認められるところ,本件予告登録前3年以内に,インターネット上のウェッブサイトに,甲3又は乙5と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに足りる証拠もない。


(2) その他の使用の事実について

ア パンテックコーポレーションのウェッブサイトのプリントアウトについて本件全証拠によるも,パンテックコーポレーションが,本件予告登録前3年以内に,本件商標の通常使用権者であったとは認められない。


 また,甲4は平成19年5月21日にプリントアウトされたものと認められるところ,本件予告登録前3年以内に,インターネット上のウェッブサイトに,甲4と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに足りる証拠もない。


イ 原告のウェッブサイトのプリントアウトについて甲6に表示されているウェッブサイト上のアドレス(http://www.bonterra.de/english/sites/produkt.htm)が我が国におけるものでないこと,同ウェッブサイトの表記が,日本語ではなく,英語であることからすれば,同ウェッブサイトの存在は,本件商標が日本国内において使用されたことを示すものとはいえない。


 また,甲6は平成19年5月17日にプリントアウトされたものと認められるところ,本件予告登録前3年以内に,インターネット上のウェッブサイトに,甲6と同一のコンテンツが存在していたことを認めるに足りる証拠もない。


(3) 小括

 以上検討したところによれば,本件予告登録前3年以内に日本国内において,本件商標の通常使用権者及び商標権者が本件商標の使用をしていたとは認められず,原告主張の取消事由1は理由がない。 』


 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


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