●平成20(行ケ)10042商標審決取消訴訟「Love cosmetic」

 弁理士論文試験を受験された方、お疲れ様でした!。思う存分、休養を取ってください。


 昨日の6/14日(土)は、13:00〜14:30に早稲田大学のRCLIPで「米国における特許訴訟及び法廷外の紛争解決−社内戦略と交渉戦略を、法廷戦略の観点から見直す−」というセミナーがあり、また13:30〜15:30に日本大学の水道橋校舎で知財学会と日本弁理士会の協賛セッションで「進歩性の判断は如何にあるべきか」というセミナーがありました。


 両方とも興味のあるテーマで、両方とも申し込んでいたので、悩んだ末、前者のセミナーの最後の方を途中で抜け出し、後者のセミナーを聴いてきました。結局、後者の弁理士会のセミナーは、最後の30分にも満たない部分しか聴講できず、もちろん単位はもらえませんでしたが、数多くの方が聴いておられましのたで、後でeラーニングで最初から聴講しようと思います。なお、司会者の方が言っていたと思いますが、後者のセミナーの進歩性の判決集は、数多くの判決例が集められていますので、今後の仕事に活用できるものと思います。講師の方、本当にお疲れ様です。


 さて、本日は、『平成20(行ケ)10042 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟「Love cosmetic ラブコスメティック」平成20年06月25日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080626092030.pdf)について取り上げます。


 本件は、拒絶審決の取消を求めた審決取消訴訟で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、商標の類似の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 中野哲弘、裁判官 森義之、裁判官 澁谷勝海)は、

2 取消事由1(商標の類似性についての判断の誤り)について

 ・・・省略・・・

(4) ところで,商標の類否は,対比される両商標又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的取引状況に基づいて判断すべきである(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。


 そして,一般に,簡易,迅速を尊ぶ取引の実際においては,商品の購買者は二個の商標を現実に見比べて商品の出所を識別するのではなくして,その商標を構成する文字,図形の各部分又はその総括した全体を通じて最も印象の強いものによって商品の出所を識別するのが普通であり,かように商標は,その作成者の意図如何にかかわらず,常に必ずしもその構成部分全体の名称によって称呼,観念されず,しばしば,その一部だけによって簡略に称呼,観念され,一個の商標から二つ以上の称呼,観念の生ずることがあるというべきところ,一個の商標から二つ以上の称呼,観念が生ずるものと認めることが許されるかどうかは,当該商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているか否かによって決すべきである(最高裁昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁。)


 これを本件についてみると,本願は前記のとおり,大きく「Love cosmetic」 ・「for two persons who love」・ 「ラブコスメティック」と三段に分かれさらにその上にの図が付されておりしかも上記「Love」, 「cosmetic」は,「 Love」と「cosmetic」との間に幅一字分くらいの空白があるのであるから,全体が「分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合している」と認めることはできず,本願商標のそれぞれの構成部分から複数の称呼,観念が生ずるものと認められる。


 そして,本願商標と引用商標は,上記のとおり称呼及び外観において「ラブ」ないし「LOVE」の語が含まれている点で共通し,観念において「愛,愛情」を生ぜしめる点でも共通する。


 その上,「cosmetic/コスメティック」の語は本願商標の指定商品である「化粧品」それ自体を指称する語であり,同旨の観念を生ぜしめる語であるから,当該指定商品との関係で同部分に出所表示の識別機能を見出すことはできず,需要者には「Love cosmetic/ラブコスメティック」は識別機能,を有する「Love/ラブ」を出所表示主体とする化粧品の関連商品と認識されるものと認められる。


 以上を総合すれば,本願商標と引用商標はいずれも化粧品販売という取引において使用される商標であり,その外観において類似するとまでいえないとしても,称呼及び観念において類似すると認めることができるから,両商標は全体としては類似するといわなければならない。

 ・・・省略・・・

(6) 以上によれば,本件商標と引用商標は類似するから,本願商標は,法4条1項11号により商標登録を受けることができない。


4 結語

 以上のとおり,原告主張に係る取消事由はいずれも理由がない。

 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。