●平成20(ネ)10087特許権侵害差止等請求控訴事件「体内脂肪重量計」

 本日は、『平成20(ネ)10087 特許権侵害差止等請求控訴事件 特許権 民事訴訟「体内脂肪重量計」平成20年06月05日 知的財産高等裁判所』( http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080606153046.pdf)について取り上げます。


 本件訴訟は,1審原告である控訴人が,1審被告である被控訴人に対し,本件特許権に基づいて,被控訴人が輸入販売しているとする被控訴人物件が本件特許権を侵害すると主張し,特許法100条1項に基づく輸入等の差止めや同条2項に基づく在庫品の廃棄並びに同法102条2項に基づく損害賠償を求めた棄却された原審の取消を求めた控訴審で、棄却された事案です。


 本件では、権利化段階で行った補正の出願経過の参酌により、本件発明の構成要件Bの「足用アタッチメント」の意義を、被控訴人製品のものは含まず、非侵害と判断した点等で、参考になる事案かと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 塚原朋一、裁判官 本多知成、裁判官 田中孝一)は、


1 当裁判所も,控訴人の被控訴人に対する本訴請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,以下に述べるとおりである。

2 争点3(構成要件Bの充足)について

 当裁判所も,輸入自認物件が本件発明の構成要件Bを充足するものではないと判断する。その理由は,次に付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第3「当裁判所の判断」の2のとおりであるから,これを引用する。


ア 控訴人は,原判決が , (i)本件発明の構成要件Bの「足用アタッチメント」は「付属品」であり,体重測定装置に取付け,取外し可能であるものを意味すると解すべきであり,(ii)輸入自認物件は,足首用電極支柱4が体重測定装置1の上面1 a に固定されているから構成要件Bを充足しないとしたことにつき,余りにも形式的「用語(部材の名称)にとらわれた誤った」ものであると主張する。


 そして, 控訴人は, 本件発明における構成要件において重要なのは,, 靴靴下を着用したままで生体インピーダンスを測定する非拘束性の「足用電極」(靴下の無い足上部に接触する電極)の有無であって,この電極が体重測定装置への着脱自在な「足用アタッチメント」に設けられているか,あるいは体重測定装置の上面に固定された部材上に設けられているかは,大した問題ではないなどと主張する。


イ しかしながら ,「アタッチメント」とは,「器具・機械の付属品」を意味する(広辞苑第4版)ところ,本件明細書には,「足用アタッチメント」をこれと異なる意味で使用する旨の明示又は黙示の定義はされておらず,構成要件Bの「足用アタッチメント」とは,体重測定装置の使用時に,使用者が自由に着脱して使用するような「付属品」をいうものであって,これを取り付けると体重測定装置の固定的な一部材を構成することになるということはできない。


 加えて,控訴人は,本件出願につき,平成16年5月31日の第1回補正における請求項14で,「載置台上に被測定者が乗ることで体重を測定する重量測定装置と,前記載置台上に設けられ,靴下の無い足上部に接触する足用電極と,前記足用電極を通じて,被測定者の生体インピーダンスを測定するインピーダンス測定装置と,前記体重と前記生体インピーダンスを演算処理して被測定者の体内脂肪重量を算出する演算処理装置とを備えることを特徴とする体内脂肪重量計。」と記載したところ(乙3。乙3 。1の2) ,平成18年5月の拒絶理由通知(乙4)において,「本願の請求項14に係る発明と引用文献1(判決注:特開平6−304149号公報)に記載された発明では,前者においては,靴下の無い足上部に接触する足用電極が載置台上に設けられているのに対し,後者においては,足裏用電極が載置台上に設けられている点において相違し,その余の点で一致する。」「しかし,引用文献2(判決注:国際公開第97/24984号パンフレット。乙29)」には,生体インピーダンス測定において,足首に電極を配置する構成が記載されている。」 「したがって,被検者が靴下を履いていることによる生体と電極との接触状態を改善するために,引用文献1に記載された「足裏用電極」を,引用文献2に記載された足首に配置する構成とするとすることは,当業者が容易に想到し得るものである。」などとされたことから,同年6月16日,請求項14を削除するなどの第2回補正を行い「足用電極」が「足用アタッチメント」に備えられていることに限定した結果(乙5),特許査定を受けたものであって(引用の原判決第2の「事案の概要」の1「前提事実」),本件発明においては ,「足用アタッチメント」が備えられていることに意義があるとされたものである。この点からも,本件発明の構成要件Bの「足用アタッチメント」は,体重測定装置に取付け,取外しが可能であるものを意味すると解すべきであって,控訴人の上記主張は採用できない。


ウ また,控訴人は,輸入自認物件における「足首電極7」 「足首電極支柱4」 「足首電極支持筐体5」等からなる「足首電極部6」は,本体部分に取り付けられる付属品にすぎないとし,構成要件Bにおける「足用アタッチメント」と同じものであると主張する。


 しかしながら, 証拠(甲3 ,5 ,乙17ないし19 , 20の1ないし6,乙21の1ないし4)によれば,輸入自認物件は,いずれも体重測定装置の上面に足首用電極部が一体的に固定された装置(乙17ないし19,20の1ないし6)として存在するものであって,これらは,被控訴人の関連会社である韓国法人JAWONメディカルが国外において販売している足首用電極部がオプションとなっている装置(乙21の1)とは相違するものである。


 もっとも,控訴人は,本件製品2の医療用輸入承認申請書の「外観図」において,同型式の装置には「足首電極」が存在せず,「足裏用電極」の存在する本体部分(甲13の4枚目の別紙1−3)と足首電極部分(同号証5枚目の別紙1−4)からなる「体成分分析器」として輸入申請されていると主張する。


 しかしながら , 証拠 ( 甲13,乙19,35) によれば,(i)本件製品2は「足首電極部分」を本体に一体的に固定した状態の機器,として輸入申請がされ,承認を受けているものであること,(ii)本件製品2等の組立てマニュアル(乙35)においても,設置の際には,六角レンチを使用し,体重測定装置に足首電極部を固定することによって装置を組み立てるとされていることなどに照らすと,「足首電極部分」は固定されたものであって,「足首電極部分」が,取り付けたり,取り外したりすることが可能なアタッチメントとして存在するものとはいえず,控訴人の上記主張は採用できない。


 さらに,控訴人は,控訴人の知的財産室室長作成の陳述書である甲14を提出し,被控訴人が販売する「体成分分析器ZEUS9.9JP」につき調査した結果,「足裏用電極」という「電極」(電極となり得るもの)が,体重測定装置1の上面に存在しており,この「足裏用電極」に配線を施すと「足裏用電極」は現に機能するようになって,「足首電極」と「足裏用,電極」を選択できるような構成となっていることが判明したこと,輸入自認物件は,本件発明の構成要件Bを充足するものであることを主張する。


 しかし,証拠(甲14,乙38,39)によれば,甲14の内容は,被控訴人において,「足裏用電極」 を利用しない構成としている同装置につき控訴人側で,その内部を開き「足裏用電極」に配線を施し,電気的に接続させるなどという改変を行った結果,「足裏用電極」が利用できるよう,になったというものであって,このような改変が可能であったとしても,そのことをもって,輸入自認物件が本件発明の構成要件Bを充足することになるものではなく,控訴人の上記主張も採用することはできない。


3 以上によれば,輸入自認物件は,本件発明の構成要件を充足するものではないことになる。


4 争点1(本件製品5及び8の輸入等の有無)について

 控訴人は,被控訴人が本件製品の販売の申出をしていることから,本件製品5及び8は,少なくとも差止請求の対象となると主張する。


 ところで,被控訴人は,自己のウェブに,他のモデル名の製品と併せて本件製品5及び8の宣伝広告を掲載していることが認められるものの(甲6の5及び8),本件全証拠によっても,本件製品5及び8に係る構成は明らかにされておらず,しかも,仮に本件製品5及び8が輸入自認物件と同様の構成であったとしても,上記2及び3のとおり,輸入自認物件が本件発明の構成要件を充足するものではないことからすれば,本件製品5及び8に対する輸入等ないしはそのおそれについて判断するまでもなく,本件製品5及び8もまた本件発明の構成要件を充足するものではないといわざるを得ない。


5 結論

 以上のとおりであるから,その余の争点について判断するまでもなく,本件製品1ないし8が本件特許権を侵害していると認めることはできず,控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく,原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。  』

 と判示されました。


 詳細は、本判決文を参照してください。


 追伸;<気になった記事>

●『中国・台湾、日本地名の第三者による商標出願問題広がる 総合的支援策を強化 へ』http://tiiki.jp/news/org_news/01policy/2008_06_07shohyo.html
●『県生物工学研究所:廃棄したパソコンから、個人情報など流出 /岩手』http://mainichi.jp/area/iwate/news/20080607ddlk03040008000c.html
●『欧米iPS研究、京大が調査へ 山中教授らグループ』http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008060700029&genre=G1&area=K00
●『「商標認めず」確定』http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/aomori/news/20080606-OYT8T00946.htm