●平成12(行ケ)474商標権 行政訴訟「ヤクルト容器の立体商標」高裁

 昨日、「コカコーラの瓶の立体商標」の判決文を取り上げましたので、本日は、『平成12(行ケ)474 商標権 行政訴訟「ヤクルト容器の立体商標」平成13年07月17日 東京高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/35ACDD4F959E3C4B49256AD30022610A.pdf)について取り上げます。


 本件は、ヤクルトの容器の立体的形状のみでは、立体商標として認めない、とした特許庁審決を東京高裁が認容した事案です。


 つまり、東京高裁(第18民事部 裁判長裁判官 永井紀昭、裁判官 塩月秀平、裁判官 古城春実)は、


1 商標法第3条第1項第3号の該当性について

 当裁判所も、本件出願の査定がその理由で示しているように、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるもの」と判断するものである。


 原告は、本願商標の形状は著名なデザイナーに依頼して完成し、これと同様の形状につき意匠登録がされたと主張するが、この主張事実も、本願商標の指定商品「乳酸菌飲料」との関係からみて、多少デザインが施されているものの、その商品の収納容器について採用し得る形状の範囲を超えているものとは認識し得ないとの上記判断と矛盾するものではなく、上記判断を覆すに足りるものではない。


 本願商標は、指定商品である「乳酸菌飲料」の容器に関するものである。


 そこで、飲料に係る商品の容器の形状に係る立体商標についてみるに、このような容器の形状は、容器自体の持つ機能を効果的に発揮させたりする等の目的で選択される限りにおいては、原則として、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有するものということはできない。


 原告は、本願商標につき、「瓶の中程、真中より稍上部に丸みを帯びた「くびれ」を付したこと、「飲み口」の形状を「哺乳瓶の吸い口」の形状としたこと、「くびれ」によって、円筒部分の直径を大きくし、視覚上(見かけ)の大きさが小さく見えない形状となっていること」において、容器の形状が独特なものであると主張するが、これらの点を考慮しても、本願商標の指定商品である「乳酸菌飲料」の一般的な収納容器であるプラスチック製使い捨て容器(甲第4号証=本件審査における原告の平成10年5月20日付け意見書の参考資料第2号その2参照)の製法、用途、機能からみて予想し得ない特徴が本願商標にあるものと認めることはできない。その他、本願商標が、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有するものであることに関する事実関係を認めるべき証拠はない。


 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。


 2 商標法第3条第2項の該当性について

 上記1に判断したところを前提にし、また、本件出願当時、既に本願商標の立体形状と同様に「くびれ」のある収納容器が原告以外の業者の乳酸菌飲料等の製品に多数使用されていたことが推認される点(甲第15号証、乙第6号証及び弁論の全趣旨)、他方、原告の商品である乳酸菌飲料「ヤクルト」について、その収納容器に「ヤクルト」の文字商標が付されないで使用されてきたことを認めるに足りる証拠はない点などをも併せ考えると、原告が主張するように、本願商標と同様の飲料製品が販売されたのは原告製品よりも後のことであることを斟酌してみても、原告の商品「ヤクルト」の容器が、その形状だけで識別力を獲得していたと認めるのは困難である。


 なお、乙第5号証の3によれば、原告が本願商標と同じ平成9年4月1日に出願した立体商標は、本願商標と同一と認められる収納容器の形状とその下部円筒部に付された「ヤクルト」の文字商標とからなるものであるが、この立体商標は平成10年8月28日に登録されていることが認められる。


 原告が審判で提出した参考資料について判断している審決の判断部分(審決の理由の要点(2)−5)における説示(そこに示されている参考資料は、本訴においては甲第4号証中の参考資料に対応する。)も支持することができる。そこに説示されている以外に、本願商標につき商標法第3条第2項に該当することを裏付けるべき事実関係を認めるべき証拠はなく、本願商標につき商標法第3条第2項の適用を否定した審決の誤りをいう審決取消事由も理由がない。


 3 判断のまとめ

 原告のその余の主張を斟酌してみても、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。」とした審決の判断に誤りがあるということはできない。


第6 結論

 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成13年5月24日口頭弁論終結) 』


 と判示されました。


 本事件では、商標法第3条第2項の該当性の判断で、

「原告の商品である乳酸菌飲料「ヤクルト」について、その収納容器に「ヤクルト」の文字商標が付されないで使用されてきたことを認めるに足りる証拠はない点などをも併せ考えると、原告が主張するように、本願商標と同様の飲料製品が販売されたのは原告製品よりも後のことであることを斟酌してみても、原告の商品「ヤクルト」の容器が、その形状だけで識別力を獲得していたと認めるのは困難である。」

 と判断していますが、コカコーラの瓶の立体形状の場合も、同様に容器に文字商標が付さずに使用されきたことは認められていないので(※飲料の容器表面に文字が付されるのは普通であり、何も文字などが付さずに使用されるということは非常にレアケースかと思います。)、コカコーラの瓶の立体形状の場合には、この点における裁判所における同一性の判断基準が緩和されたのでしょうね。


 詳細は、本判決文を参照してください。


追伸;<気になった記事>

●『文字や図形が付されない容器での立体商標として日本初 コカ・コーラ コンツアーボトルの立体商標が認められる―知的財産高等裁判所が判断―』http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_000453.html
●『立体商標:飲み物容器で初、「コカ・コーラ瓶」認める 知財高裁が特許庁審決取り消し』http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080530ddm012040021000c.html
●『特許出願「他業者と重複部分除く」有効と認定 知財高裁』http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/080530/trl0805302255012-n1.htm
●『パテントプールのシズベル、中国の標準化団体と特許管理で協力』http://www.ipnext.jp/news/index.php?id=3608
●『シズベルとCESIが、中国での標準化成功に向け協働』http://www.businesswire.com/portal/site/google/?ndmViewId=news_view&newsId=20080529005603&newsLang=ja
●『上院、特許改革法案を審議へ〜「パテント・トロール」の阻止を目指す』http://www.usfl.com/Daily/News/08/05/0529_036.asp?id=61134
●『特許庁知財政策提言へのパブコメ募集,世界特許庁,不確実性低減,オープン・イノベーション提言』http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080531/305496/
●『【わかる中国知財法】意匠登録による商品形態の保護』http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0530&f=column_0530_002.shtml